■リツイートでも自身の発信と同様の扱いに
しかしながら、このような主張に対して裁判所は、「しかし、リツイートも、ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で、自身の発言と同様に扱われるものであり、原告X2の発言行為とみるべきであるから、リツイートについて名誉毀損等が成立するとして損害賠償請求をすることが直ちに不法な請求として違法になるものではなく、また、リツイートは元となるツイートと同内容ではあるものの、別の発言行為であるから元のツイートについて不法行為が成立するとして賠償請求がされていても、リツイートした人物に対し同様に不法行為が成立するとして賠償請求をすることが二重提訴となるものでもない」としました。
そして、「自身の発言と同様に扱われるものであり、原告X2の発言行為とみるべき」として、「自分が発信したものではない」という主張を認めませんでした。
また、東京地方裁判所平成27年11月25日判決では、「リツイートは、既存の文章を引用形式により発信する主体的な表現行為としての性質を有するといえるから、本件ツイート等の名誉毀損性の有無を判断するに際しては、リツイートに係る部分をも判断対象に含めるのが相当」とされています
■フェイスブックの「シェア」も共有行為
以上の裁判例に照らせば、名誉毀損やプライバシー侵害等にあたるツイートをリツイートした場合、そのリツイート行為も不法行為にあたるとして損害賠償責任を負う可能性がある、と言えるでしょう。
当然、リツイートだけでなく、「記事そのものを引用・発信する」という形式のもの(例えば、フェイスブックにおける「シェア」)については、同様のことが言えると思います。
情報を、広範囲の人と低コストで瞬時に共有できることがインターネット(ソーシャルネットワークサービス)の利点ではありますが、情報の内容によっては、共有行為(リツイートやシェア等)が他人の権利を侵害する不法行為とされることがあるという点を、頭の片隅に置いておいたほうがよいでしょう。
*著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)
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