■慰謝料を独り占めすることは可能?
では、もし首尾よく妻には知られずに慰謝料を受け取ることができた場合、このお金を自分だけで使うことは問題ないでしょうか?
「当該慰謝料請求権は夫固有の債権であるため、夫のみが当然に受領すべきものです。」(梅澤弁護士)
民法は夫婦別産を謳っていますし、夫が受領した慰謝料は財産分与の対象にもならないと思います。したがって、夫がこれを自分自身のために使うことには問題ありません。なお、社会通念上の基準内の慰謝料は非課税となります。
以上のことから、もし妻に知られずに慰謝料を受け取れた場合、その慰謝料を完全に自分ひとりのものとすることは可能です。とはいえ、夫婦の間に隠し事を持つことは、信頼関係の妨げになることも考えられます。夫婦関係の継続を望むなら慰謝料請求についてもよく考えたほうがよいのではないかと思われます。
*取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
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*ストリーム / PIXTA(ピクスタ)
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