■保護者の規範意識に訴える
ところでこれらの手続きは、弁護士にしか申請できないものなのでしょうか? 学校や市の職員ではなくわざわざ弁護士に回収委託するということは、弁護士にしかできないような債権回収の方法があるのでしょうか?
「催告書の送付も支払督促も、弁護士でなければできない手続きではありません。滞納児童生徒の家庭に心理的プレッシャーを与えるという意味で弁護士に依頼するのだと思います。」(梅澤弁護士)
なるほど、教師や書面による催促は無視できても、弁護士からの催促には「ヤバイかも」と思うかもしれません。
文科省の調査「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果について」(平成24年度)では、未納の主な原因は「保護者としての責任感や規範意識」が61.3%と、「保護者の経済的な問題」の33.9%を大きく上回ります。弁護士による回収は保護者の規範意識により強く訴えかけることができると考えられます。
大阪市立の小中学校の給食費は1カ月で4~6,000円。大阪市のサイトに記載されている平成27年度の支払督促の申し立ては108件(1,005万3,903円)、債権差押命令の申し立ては11件(109万5,538円)ですが、弁護士へ委託することで今年度中に約2,000万円の回収を目指しているとのことです。
学校給食制度が児童生徒の健やかな成長という本来の目的のために継続されるよう、滞納問題の解消が望まれます。
*取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
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