■次善の策はローンの「借り換え」。それもできない場合は…
住宅ローンの名義変更そのものができない場合の次善の策としては、妻が他の金融機関から住宅ローンの返済に足る金員を借り入れて完済し、その後新たな借入先に対して月々の支払いをしていくという借り換えの方法があげられます。
しかし、この方法による場合も借り換え先の金融機関からは、夫から養育費などで月々一定額以上の支払いを受けることを条件とされる場合もありますし、また、あまりに収入が低い場合には借り入れができないケースもあります。借り入れができたとしても月々の支払額を少額にせざるを得ず、返済期間が長期に及ぶ場合もあり得ます。この場合、金利の負担が非常に重くなるといった問題が発生します。
そこで、最終手段として、ローンの債務名義も物件の名義も変更せずに、妻と子がそこに住み続け、事実上、妻が支払いをしていく(引き落とし口座に支払額を入金しておく)という対応をせざるを得ない場合もあります。現状に変更を加えない点で、楽といえば楽な方法ではあります。
しかし、この方法では、いつ支払いができなくなるかわからなくなり、支払いが止まれば金融機関が持っている抵当権が実行され、売却せざるを得なくなる危険性があります。
■結局、確実な方法はない…
家を買うときに将来離婚するかもしれないと思っている方はほとんどいないことでしょう。しかし、家という大きな財産を得てしまった後の離婚は非常に面倒であり、さらにその財産をはさんで別れた相手との関係も続いてしまう煩わしさも残ることがあるのです。
このような意味でも「大きな買い物」は慎重に行うべきであるということなのかもしれません。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
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*Mills / PIXTA(ピクスタ)
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