離婚時の財産分与で一番厄介なのが、「住宅」の問題です。問題は、夫名義の家から夫が出て行って別居をはじめ、妻や子がそこに住み続けている、今後もそこに住み続ける意向が強い、というケースです。
住宅ローンをすでに完済しているようなケースでは、名義の移転や売却益の分配というある程度争点が単純ですが、問題になるのは、まだ住宅ローンが残っている、しかも売却しても益が出ないオーバーローンのケースです。婚姻して日が浅いほど、そして子が小さいほど、ローンの問題は重くのしかかります。
そこで、今回は、離婚時の住宅ローンの処理方法について、下記のようなケースを例に解説していきたいと思います。
夫がローンを組んで4,000万円でマンションを購入し、未だローンが2,500万円残っている。名義は夫だが、妻と4歳の長女が住んでおり、夫は賃貸マンションで生活している。妻はパート勤めで年収100万円程度。
■一番良いのは、ローンの名義も所有名義も妻に移せるケース
住宅ローンと所有名義の変更には、当然ローンを組んでいる金融機関の同意が必要となります。
しかし、金融機関の同意は、実際に夫婦が離婚した後でなければもらうことができません。金融機関によっては、事実上離婚協議中、あるいは調停中の段階で名義の移転が可能かどうか、おおよその審査をしたうえで見通しを示してくれるところもありますが、そういうことすらしてもらえない場合も少なくありません。
ただ、住宅ローンの名義変更が可能な最低限の目安は、月々の支払額が新たな債務者の月収の約30パーセント以内に収まっていることと一般的に言われています。
年収が100万円程度の妻のケースでは、この方法をとることはほぼ不可能と考えざるを得ません。
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