■過労死・過労自殺の場合、労災かどうかの判断には時間がかかる
今回の問題の時系列としては、自殺があったのは昨年の12月で、今年4月に遺族が労災を申請し、9月30日に労災と認められました。遺族の労災申請から認められるまでに半年近くかかっています。
機械に巻き込まれて指を切断したといったケースでは、仕事中の怪我であることがはっきりしていますので、こんなに時間はかかりません。
これに対し、過労死・過労自殺の場合、仕事が原因の疾病かどうかは即断即決できるような事実ではありません。関係者からの事情聴取や資料収集等によって、事実関係を確認・認定して判断していくことになると思いますので、判断に半年以上かかるケースもあるようです。
今回労災と認められたわけですが、仮に労災と認められなかったとすると、それでもいきなり裁判を起こすこともできないことになっているため、さらに審査請求や再審査請求といった手順を踏み必要があり、裁判(行政訴訟)を起こすまでにさらに半年位かかってしまいます。裁判となるとさらに何年かかかります。
企業に対しては、従業員の健康面についても責任を負う立場にあることを自覚し、これ以上被害者が出ないようにしていただきたいと思います。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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*Kazuhiro Konta / PIXTA(ピクスタ)
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