不倫、つまり不貞行為が離婚の原因や、慰謝料請求の原因になることは常識ですよね。
たとえば、配偶者が不貞をした場合、不貞をされた配偶者(以下:一方配偶者)としては、不貞をした配偶者(以下:他方配偶者)に対して慰謝料を請求することができることも周知の事実だと思います。
それでは、一方配偶者としては、不貞相手に対しても慰謝料を請求することはできるのでしょうか。
■配偶者の浮気相手に慰謝料請求はできる?
この点に関して、最高裁は、一方配偶者は、不貞行為について不貞相手に故意または過失がある場合には、不貞相手に対しても慰謝料請求をすることを認めています(最高裁昭和54年3月30日判決)。
上記判例によれば、不貞相手に、不貞行為について故意や過失がない場合には、不貞相手に対する慰謝料請求は認められません。
■不貞行為の故意や過失って?
不貞行為について故意や過失がある場合とは、他方配偶者が既婚者であると知っていた場合(故意)、あるいは、他方配偶者が既婚者であるとの疑いを持つような具体的な事情(結婚指輪をしている、子どもがいるなど)があるのにもかかわらず、未婚者であると軽信してしまったような場合(過失)です。
そのため、不貞相手が、他方配偶者から自分は未婚者だと聞かされていて、他に他方配偶者を既婚者だと疑うべき具体的な事情がない場合には、故意や過失が認められないことになります。
■慰謝料は双方に請求することができる
不貞相手の責任が認められる場合、他方配偶者と不貞相手は、共同不法行為責任(民法719条1項)を負いますので、一方配偶者としては、他方配偶者と不貞相手の双方に対して慰謝料を請求することができます。
ただし、二人に対して請求できるからといって、慰謝料が2倍になるというわけではありません。一方配偶者としては、他方配偶者と不貞相手双方に対して慰謝料を請求することはできますが、慰謝料の金額は、一人ずつからとれる額と変わらないということです。
■不貞相手だけに請求する事も可能
また、一方配偶者としては、他方配偶者には請求をせず、不貞相手にだけ請求することもできます。
もっとも、不貞相手が、一方配偶者に対して慰謝料を支払った場合には、不貞相手は、共同不法行為者の一人である他方配偶者に対して、求償権を行使することができます。
そのため、他方配偶者としては、一方配偶者に慰謝料を請求されなかったからといって安心することはできず、最終的には慰謝料の半額程度を負担することは覚悟しなければならない、ということになります。
*この記事は2015年4月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
【画像】イメージです
*msv / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
*【弁護士が解説】できれば避けたい夫婦間の生活費トラブル…法律で決まりはあるのか?
*もしも「DV被害」にあったとき、押さえておくべき4つの対処法
*【離婚後の問題】お金持ちと再婚した元妻に、養育費を支払い続ける義務はあるのか