本業以外の多様な経験を積むことで、スキルアップができて本業にも好影響が生まれるとの判断から、副業を許可する企業が近年増えてきていますが、それに伴いこれまでになかったトラブルも増えてきているようです。そこで、法的に気をつけておきたい点をご紹介できればと存じます。
■1.勤務先で副業が禁止されていないか
まず、副業しても大丈夫なのか、勤務先で副業が禁止されていないか確認しておく必要があります。就業規則等で副業が禁止されている場合もあるからです。禁止されているのに勝手に副業した場合、解雇される可能性もあります。
本来、従業員が就業時間以外の時間をどう使おうと自由なはずです。
しかし、副業にのめり込んで疲れ果て、本業の就業時間中に居眠りしたり、ケアレスミスを連発するようでは勤務先に迷惑をかけてしまいます。副業の内容によっては勤務先の信用が失墜することや、機密情報の漏洩に繋がることだってあります。
実際の裁判例でも、副業を全面的に禁止するのはやり過ぎだけれども、許可制にするのはOKで、勤務先の許可を得ないで夜のお店で働いた従業員の解雇について有効と判断したものがありました。
■2.詐欺被害に遭う可能性や、詐欺の片棒を担がされていないか
最近、アフィリエイトやドロップシッピングといったネット副業をする人が増えているようですが、関連するトラブルが増加しているようです。
アフィリエイトというのは、自分のサイトで他者の商品を紹介して、閲覧者に購入させて報酬を得る仕組みです。ドロップシッピングというのは、手元にない商品を自分のネットショップで販売して、閲覧者に注文させ、その注文情報をメーカー等に流して閲覧者に商品を発送させ、閲覧者への販売価格とメーカー等からの購入価格の差額を自分の利益にする仕組みです。
これらアフィリエイトやドロップシッピングに関しては、「初心者でも簡単」「不労所得が得られる」といった内容で簡単に儲かる副業のようにネットや雑誌で紹介されていたりしますが、中にはそのお膳立てをすると言って利益を得ようとする人達もいるので気を付けなければいけません。
■ネットだからと安易な儲け話に決して飛びつかないこと!
よくある被害が、アフィリエイトやドロップシッピングのやり方に関する教材を高額で購入させられたり、サイトの作成料等で高額の初期費用を支払わされたりする被害です。高額の初期費用を支払ってサイトを立ち上げたものの、サイトへのアクセスがなく売り上げがほぼないといったケースです。
アフィリエイトの場合には、他社の商品を紹介して勧めるわけですが、どんな商品であるか確かめもせず紹介して販売した場合、粗悪な商品だったとして購入した閲覧者から損害賠償を請求される可能性もあります。
ドロップシッピングの場合にも、粗悪な商品であれば売主としての責任が生じますし、手元にない商品を販売するといったシステムなので、販売したけどメーカーに在庫がなかったといったトラブルに巻き込まれることもあります。
副業にも良い面があるわけですが、副業で勤務先に迷惑をかけないよう、また自身が被害に遭ったり、閲覧者に被害を与えないよう、注意する必要があると思います。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
【画像】写真はイメージです
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