まもなくシルバーウィーク。今年の連休は飛び石ですが、有給休暇を3日加えれば連続10日休むことも可能です。とはいえ、せっかくの好機もあまり利用されてはいないようです。自動車の渋滞予測をみると18日、19日がピーク。ホテルの予約サイトも19日から空きがぐっと増えるので、暦通りに休む人が多数派であることがうかがえます。
厚生労働省の平成27 年「就労条件総合調査」によれば、年次有給休暇の取得平均日数は8.8日。取得率は47.3%。25年は47.1%、20年は47.4%と、40%後半での推移が続いています。つまり、せっかくの有給休暇を半分も使わないという状態が続いているわけです。
ビジネスパーソン的な視点では、「有給休暇」は自分の都合で休める便利な休日ということになりますが、法的にはどのような意味をもつのでしょうか。桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に尋ねてみました。
■有休休暇はビジネスパーソンの権利
「有給休暇は従業員に与えられた法律上の権利です。それを定めているのは労働基準法39条1項。そこには、使用者は雇入れの日から6カ月以上継続勤務し所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して有給休暇を与えなければいけないとあります」(大窪弁護士)
「使用者」という言葉に違和感を持つ人がいるかもしれません。「使用者」には、社長などの事業主だけではなく、管理職、店長、現場監督など「休暇取得の許可」を出す立場すべての人が含まれています。
読者の中にも「使用者」の立場にいる人は少なくないでしょう。部下が有給を申請してきたのに許可しなければ、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるので注意してください。
■有給休暇の日数は大企業も個人事業主も同様
有給休暇の日数は、一般社員の場合、半年目は10日、1年半は11日といった具合に勤続勤務年数に応じて増え、6年半務めると20日になります(なお、労働時間が短いパートタイム労働者には別途日数の定めがあります)。ちなみに有給休暇の日数も、取得の法的義務も大企業・中小企業・個人事業主で変わることはありません。
したがって、例えば個人事業主が人を雇っていた場合、経営者である個人事業主は有給休暇をとる権利はありませんが、従業員に対しては有給休暇を与えなければ法律違反になります。
これだけ法的な環境が整っているにも関わらず有給休暇の取得率が伸びないのは「労働者側が有給休暇をとることに罪悪感を持っていること」「経営者側もまた有給休暇を積極的にとらせようとしていないこと」の両面がその背景にあるといえるでしょう。
「法律で有給日数を増やすなど抜本的な改正をしない限り、今後もこの傾向が大きく変わることはないと思います。それではせっかくの権利が絵に描いた餅になります。有給休暇をめぐる環境を変えていくためには、一人ひとりが自分の権利を積極的に行使するという心構えを持つことが大切です。次の連休は、ぜひ積極的に権利を行使してみてください」(大窪弁護士)。
*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間の間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。北海道紋別市で3年間、鹿児島県奄美市で3年間公設事務所の所長をつとめたあと、再度北海道に戻り名寄市にて弁護士法人の支店長として5年間在任。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)
*取材・文:ライター 竹内三保子(編集プロダクション・
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*ぺかまろ / PIXTA(ピクスタ)
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