120年ぶり!?「債権法」改正に備えて、契約書や約款の見直し時にチェックしておきたい4つのポイント

約120年ぶりとも言われる「民法の債権法が改正される!」というニュースはもうずいぶん前から流れて大きな話題となっていましたが、実はまだ改正法は成立しておらず、来年(平成29年)の通常国会でやっと成立する見込みとなっています。

実際に施行されるのは約3年後ですが、それまでの間に契約書や約款の見直し・改定をしなければなりませんので、特に企業法務の担当者の方は、今のうちから準備をしておくことがいいかもしれませんね。

今回の債権法改正では「危険負担制度の廃止」、「詐害行為取消権につき破産法上の否認権と平仄を合わせた」、「消滅時効期間の改正」、「法定利率の変更」等の学問的・実務的に重要な点もありますが、今回は、企業法務に与える影響が大きいといえる、契約書や約款の改訂に当たりチェックすべきポイントを簡単に紹介したいと思います。

画像:https://pixta.jp/

 

■(1)「隠れた瑕疵(かし)」という文言がなくなる

現行民法では、売買においては「目的物に隠れた瑕疵」がある場合(現行民法570条)、請負においては「仕事の目的物に瑕疵」がある場合(現行民法634条1項)に、それぞれ瑕疵担保責任を追及することができると定められています。

改正後の民法では、従前の「隠れた瑕疵」の解釈を明文化し、「(目的物が)種類又は品質に関して契約の内容に適合しない」場合に、追完請求、代金(報酬)減額請求、損害賠償請求、契約の解除ができると改められました(改正後の民法562条、563条、566条、636条)。

そもそも「瑕疵」という日本語は難しいですし、改正後のほうがわかりやすいといえますね(なお、改正後も民法から「瑕疵」の文言が完全に消えるわけではありません。)。

 

■(2)解除に帰責事由は不要となる

当事者間の合意によらず、相手方の債務不履行を理由として契約解除を行う場合、現行民法では相手方に帰責性(過失)があることが必要でした。

しかし、改正後は、債務不履行に基づく解除一般に債務者の帰責性が不要になります(改正後の民法541条等)。

したがって、改正後も相手方に帰責性のある場合に解除ができると定められてある従前の契約書書式をそのまま使っていると、契約(特約)をしたのにもかかわらず、かえって民法よりも解除できる場合が狭まってしまうことになりかねません。

なお、催告解除(履行遅滞解除)の場合は、新たに、債務不履行が契約及び社会通念に照らして軽微とはいえないことが要件となります(改正後の民法541条)。

 

■(3)事業用土地賃貸借期間の伸長

現行民法では賃貸借の存続期間は最長で20年とされています(現行民法604条1項)が、改正後は、最長期間が50年とされました(改正後の民法604条1項)。

これにより、建物所有目的でない事業用土地賃借(太陽光発電パネル・システム設置等のための賃貸借)について、当初の契約から期間を延ばすことが可能になりました。

 

■(4)定型約款の規定の新設

改正後の民法では、新たに定型約款の規定が設けられることになりました(改正後の民法548条の2以下)。

大手のウェブサービスを導入している企業やインターネット取引(定型取引)を行っている企業は既に改正後の「定型約款」(改正後の民法548条の2第1項本文)に当たる規約を準備し、「定型取引合意」(同本文)を行っているといえると思いますが、ソーシャルゲーム運営会社やベンチャー企業等では、改正後の定型約款の規定を意識して利用規約を定めたほうがよいかもしれませんね。

なお、定型約款の規定は便利な反面、不当条項や不利益な約款の変更については規制がかかりますので注意が必要です。

 

債権法の改正は、基本的には従前の解釈・実務・判例を明文化したものが多いですので、企業法務に与える影響が大きいかというと実際はそうでもないかもしれません。

しかし、改正法施行後も契約書や約款上に旧法の文言が使われていると、カッコ悪いだけでなく、「法務部門がしっかりしていないのかな?」、「この会社と取引しても大丈夫かな」と思われて、ビジネスチャンスを失うことになってはもったいないです。

細かい文言にもしっかり気を配り、取引先や上司から高い評価を受けたいですね。

 

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)

*nara / PIXTA(ピクスタ)

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木川 雅博 きかわまさひろ

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