夫婦間で家計にいくら生活費を入れるかで揉めるケースがよくあります。
家計に入れるべき生活費の基準や、夫婦間の割合等について、法的には何か基準があるのでしょうか? そして、生活費をいれないなどのトラブルがあった際は請求できるのでしょうか。それとも法的に基準がなく「夫婦間で勝手に決めろ」という話なのでしょうか…。
今回は、夫婦における生活費に関するお話をしたいと思います。
■夫婦間における生活費負担の基準は?
まず、夫婦間における生活費のことを、法律では「婚姻費用」と言います。
具体的には、配偶者の収入・財産に応じた生活水準が必要とする生計費・交際費・医療費等の日常的な支出や、夫婦間の子の養育費・学費・出産費等を含む、婚姻から生じる費用のことです(冨永忠祐編「離婚事件処理マニュアル」196頁)。
そして、婚姻費用は、夫婦で「分担する」ものとされています。
「分担する」とは、夫婦が共働きで、収入も同程度ならば、平等の割合で婚姻費用を支出することになりますが、どちらか一方の配偶者に収入があって、他方の配偶者が無職で無収入の場合には、収入がある配偶者だけが婚姻費用を支出することになる、ということです。
■金額について具体的な基準があるのか?
それでは、婚姻費用は、具体的にはいくら支出すればよいのでしょうか。
これについては、上記のとおり婚姻費用は、夫婦の収入・財産に応じた生活水準を維持するために必要な金額ということになりますので、それぞれの夫婦によって金額が異なります。
すなわち、収入が多い夫婦の場合には、生活水準を維持するために必要な金額も高くなりますので、婚姻費用の金額も高くなるということです。
逆に、収入が少ない夫婦の場合には、生活水準を維持するために必要な金額も低くなりますので、婚姻費用の金額も低くなるとういことになります。
■配偶者が必要な生活費を入れない場合は?
収入のある(あるいは、収入がより多い)配偶者が、夫婦の生活水準を維持するのに必要な金額を家計に入れないという場合、他方の配偶者としては、収入のある配偶者に対して不足している分の婚姻費用を支払うよう請求をする権利があります。
具体的には、収入がある配偶者に対して、婚姻費用分担の調停や審判を申し立てて、婚姻費用を支払うよう請求するということになります。
最終的には、裁判所が夫婦の生活水準や夫婦の収入や財産、子どもの教育費等を総合的に考慮したうえで、妥当な婚姻費用の金額を決定することになります。
*この記事は2015年3月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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