高齢者の契約に対し、高額なサポート契約解約料を設定していたことに端を発し、その営業体制がネットを中心に大きな話題となったパソコン専門店、PCデポ。
今度は社長がインタビューで「ノルマは課していない」と発言したことに対して、怒った従業員が「トウゼンカード」と呼ばれる、実質的に従業員に営業などのノルマを強制的に課すような項目が記載されたシートを、インターネット上に掲示しました。
このような行為には問題があるか、検討してみましょう。
■PCデポ側の対応に違法性があるか
本件では、「ノルマは課していない」としたことに、従業員がそれは事実とは異なるとして怒っていると報じられています。
たしかに、「トウゼンカード」はできて当然のことである以上、ノルマではないという捉え方は可能であり、どうやらPCデポ側もそのような認識であることがうかがえます。また、そもそもノルマを課すこと自体は問題があるわけでもありません。
したがって、会社がこのようなアナウンスをしたとしても、直ちに違法ということにはなりません。
■「トウゼンカード」の流出に違法性はあるか
一方、「トウゼンカード」は会社の内部資料です。
従業員は会社との間で、通常、会社の情報を漏らすことがないよう守秘義務の契約をしていると思われます。もちろん、何でもかんでも守秘義務の対象になるかというと、必ずしもそうではないと思いますが、少なくとも業務運営上のノウハウが含まれるものや、社内資料として外部への公開を予定していないものについては、守秘義務の対象といえると思います。
「トウゼンカード」は、業務運営上のノウハウを含むものといえそうなので、これを流出させることは、会社との関係で守秘義務契約に反していることになります。
そのため、会社からは懲戒処分を受ける可能性があるといえます。
もっとも、「トウゼンカード」の内容からして、不正競争防止法上の「営業秘密」とまで言うことはできないと思われ、これを流出させたことをもって、罪に問うとか、損害賠償請求をするということは困難と思います。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)