国会で安保法案が成立しました。
参議院本会議の前に、特別委員会で採決がされましたが、その採決は、ニュース映像で流れたとおり、与野党の議員が委員長席を取り囲み怒号が渦巻き、騒然とした雰囲気の中で行われました。
与党議員の一人が委員長席のそばで手を上げたところ、自公の議員が起立して拍手しました。そして、特別委員会の決議がなされたことになりました。
報道によれば、議事録は作成されていないようですし、速記録もないようです。すべて、委員長一任ということです。
一部ネットユーザーは、この特別委員会の決議が無効だと主張しています。
●株主総会だったら無効となるが・・・
仮に、株主総会で同じような採決がなされれば、その採決は無効だと裁判所は判断します。それは、株主総会は会社法やその他の法令で手続が規定されているからです。その手続に違反してなされた議決は、裁判所によって無効と判断されたり取り消されたりします。
特別委員会の手続も憲法、国会法、参議院規則などによって規定されています。その手続に違反すれば、裁判所が無効と判断しても良さそうに思えますが、実は違います。
仮に裁判所が国会の特別委員会の議決を無効だと判断することが出来ると、国会が裁判所の指導を受けるような立場になります。国会で成立した法律が、もしかすると、後の裁判所の判断によって無効になるかも知れません。そのような国もあります。タイでは、国会が成立させた法律を後に裁判所が無効にしています。
●日本では無効にならない理由
しかし、日本では、裁判所にそのような強い権限を与えていません。
裁判所に強い権限を与えると司法独裁になると考えたからだと思われます。国会における手続が正当になされたか否かは、国会が判断し、その他の機関(裁判所や内閣)が判断出来ないと考えられています。これを国会の自律権と言います。
国会の自律権がありますので、国会では最終的に多数派が勝手なことが出来るとも言えます。しかし、国会議員は選挙によって選ばれます。有権者が国会の手続や議決がおかしいと判断すれば、次の選挙で与党を野党にすることが出来ます。
つまり、国会を監視し、指導監督するのは裁判所ではなく、有権者です。
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*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
*白熊 / PIXTA(ピクスタ)