「少年法って本当に必要なの?」 …7人の弁護士に聞いてみました

凶悪な少年犯罪が起きるたび、少年法への関心が高まります。

川崎市で中学1年生の男子生徒が少年グループに殺害された事件を受けて、「少年法を改正すべき」「少年法なんていらない」という声が多くあがっています。

もちろん、少年法の必要性についても多くの意見ありますが、少年法について激しい議論が巻き起こっているのは事実でしょう。

それでは、法律の専門家は少年法の必要性についてはどのように考えているのでしょうか。シェアしたくなる法律相談所で執筆されている弁護士の中から7人の弁護士に答えて頂きました。

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河野晃先生 河野 晃

少年法は絶対に必要です。

「少年法なんか無くしてしまえ!」と本気で主張している方に僕自身お会いしたことは無いのですが、もし仮にそういう方がいるとすれば、刑法の適用年齢をご存知か伺いたいです。

刑法41条が「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と規定されていることから、14歳未満の行った刑事法令に反する行為については、完全に御咎めなしということでいいということになりますよ。本末転倒ではありませんか?

また、川崎市の事件を受けて「少年が少年法により守られている」という批判があるようです。しかし、この事件の場合、少年法上でも原則逆送事件(検察官送致となる事件)になりますし、結果、大人と同じ裁判を受け、死刑になる理論上の可能性はあります。凶悪犯罪に対しては相応の例外が定められておりますので、上記批判は失当です。

少年法により、多くの非行少年に更生の機会が与えられていることは大変意義があると個人的に実感しています。少年法は絶対に必要な法律です。

 

田沢剛先生 田沢 剛

そもそも少年法は必要なのか、という問いに対しては、必要と考えます。

少年は、将来において社会を担っていく大人になるための生育途上にあるものです。そのような生育途上にある少年が過ちを犯したからといって、これに刑事罰を科すことは、少年をきちんと教育していない保護者を含めた大人が負うべき責任を教育を受けるべき少年に押し付けることになるからです。

「少年の健全育成」を目的に、教育的な配慮から非行少年の処遇を考え、刑罰を科すことのできる場合を限定している少年法は、「きちんとした教育」を受けて来なかった少年に対し、社会を担う大人になれるように、必要な措置を講じ、機会を提供しているものだと考えます。

川崎中1殺害事件を受けて、少年に対し、より刑罰を科しやすくする方向での改正議論が始まろうとしていますが、すでに厳罰化が進められて今日の姿になった少年法の枠組みの中で対処できないものなのかどうか、議論を重ねてきちんと検証して頂きたいものです。

 

山口政貴先生 山口 政貴

私は司法修習生時代に少年院に研修に行き、実際に少年院に入っている少年たちと昼食を共にし、いろいろ話をしたことがあります。

その少年はとてもまじめで、自動車が好きなので将来は自動車整備の仕事に就きたいと真剣に語っていたのを今でもはっきりと覚えております。

少年には未来がありますので、いかに罪を犯したとしても、少年の未来を完全につぶしてしまうようなことはあってはなりません。ですので、私自身は少年法は必要だと思います。

もちろん、被害者感情は十分理解できますので、安易に少年であることのみをもって少年を必要以上に保護することは反対です。しかしながら、「少年であろうと罪は罪、犯罪者に違いないのだから重罰にすべき」という極めて雑な考え方には同意できません。

ただ、現行法のように「20歳」というところで線引きをすることが妥当かどうかは非常に難しい問題です。しっかりとした議論をした上で、場合によっては年齢見直しということも考えうると思います。

 

星野宏明先生 星野 宏明

少年事件を担当したときなどに、建前ではない本音で弁護士がぶつかってあげると、成人とは明らかに異なる反応(更生の意欲)を見せることが多いです。

その意味で、少年がもつ更生可能性に期待し、社会が責任をもって刑罰に頼らない更生支援、再犯防止を模索する少年法の基本的な考え方は間違っていないと実感します。

他方で、少年も全員が全員、少年法が期待する更生を果たせるわけではないことも事実であり、成人と同じような被害感情への配慮、罪の償いもある程度必要だと思います。

なかなかバランスは難しいところですが、例えば、刑期の期間を成人に近づけつつ、少年にはさらに厚い職業支援や社会復帰支援策を講じてもよいのではないでしょうか。

少年に対し社会が責任をもって見守り更生させることと、犯した罪の償いを成人と同じようにさせることは、両立可能だと考えます。

罪を償う観点を強めるために厳罰化する方向での少年法改正も賛成ですが、同時に社会復帰支援策も拡充するべきだと思います。

 

星正秀先生 星 正秀

必要だと思います。

一度でも少年事件の付添人を経験すれば、多感な少年に対し、手厚い保護が必要なことが分かると思います。

警察は、治安の維持が主目的であり、犯罪者の更生を主たる目的とはしていません。大人と同じように警察、検察庁、地方裁判所だけで少年のことを決めると、少年の更生ははかられないと思います。

鑑別所、家庭裁判所調査官などの専門家らが少年に寄り添い、少年の処分を決めるべきですし、仮に、自由刑にするとしても、大人と同じ刑務所ではなく少年院で処遇すべきです。

 

寺林智栄先生 寺林智栄

少年法は必要だと思います。

少年法の目的は、更生に向けて柔軟性を持っている少年が、犯罪や非行を行った後に、排除されることのないよう配慮することを含んでいるからです。

個人的には、この目的は非常に重要で尊重されるべきと考えます。

ただ、審判のやり方は、いわゆるお白洲方式に近く、言い訳を許さない不公平なものだと考えます。公開は別としても成人の刑事手続と同様にすべきです。

また、被害者の氏名などが公開されることから犯罪を犯した少年の氏名も公開すべきという意見もありますが、反対です。この点に関する公平性は、被害者の個人情報保護を図ることによって保つべきです。

 

川浪芳聖先生 川浪 芳聖

少年法は必要と考えます。

私のこれまでの経験上、少年の場合、家庭環境や交友関係によって非行に至る場合が多く、大人と比べて環境調整によって更生しやすいという傾向があります。

また、少年は人格形成の途上にあるため、矯正教育が大人に比べて効果的という点もあります。大人であれば、自ら働いて稼ぎ、自己の力で現状を変更する余地がありますが、少年の場合、年齢によっては就労制限があって事実上、親のもとから抜け出せないという事情があること等も踏まえると、少年法は必要でしょう。

ただし、少年法の廃止には反対ですが、その改正については内容が合理的であれば反対するものではありません。

 


 

以上のように弁護士7人全員が「必要」と答える結果となりました。実際に少年事件を担当するなど、現場で少年達と対話を行ってきた方々ならではの意見は、外からでは分からない貴重な意見でしょう。

これらの意見を聞いた上で、もう一度少年法について考え直してみるのも良いかもしれません。

あなたは少年法についてどう考えますか?

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