弁護士が教える、生活保護を受けられる条件と申請方法

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非正規雇用の浸透や高齢化社会の到来などなど様々な要因で、日本でも貧富の差が広がってきました。収入がない、あるいは収入はあっても到底生活できるレベルではない。そんな人たちが増えています。

生活保護は、そういった貧困に陥った人々が「野垂れ死に」しないように設けられた制度です。今回は、この生活保護が一体どのような制度なのか、その基礎知識について解説していきます。

 

■生活保護の受給資格

生活保護を受けるにあたって、年齢制限や居住要件などはありません。その収入や資産が、生活保護基準を満たし、援助してくれる親類がいない場合には、原則として受給することができます。

車を保有していると生活保護が受給できないと言われていますが、必ずしもそうではなく、例えば就職活動のために使用しているようなケースでは、例外的に保有の上で生活保護を受給することができる場合があります。

生活保護法は受給対象を日本国民としていますが、永住者や日本人の配偶者などについては、日本人と同様に生活保護が実際には認められていますし、このようなケースでなくても、人道上の見地から支給されるケースがあります。

また、役所などに申請に行くと「住民票がないので受給資格がない」などと職員が断るケースが相当数あるようですが、住民票がなくても生活保護の受給資格はあります。居住要件がないというのは、このような意味です。

 

■申請の手順や必要書類などについて

生活保護の申請は、各自治体の福祉事務所、生活保護課などで行います。自治体が用意した書式に必要事項を記入し、預金通帳の写しなどの資産に関する資料を提出します。また、医療費も生活保護で賄われることになりますので、保険証も自治体に渡すこととなります。

生活保護法上は、受給資格を満たす場合には、原則として申請から14日以内に支給の決定をしなければならないとされていますが、この期間については守られないことも少なくないようです。

申請から決定までの生活費については、所持金の金額次第で、「前借」のような形式で貸与してもらうことができます(但し、支給決定後、生活保護費から差し引かれることになります)。

また、生活保護費の金額については、地域や世帯の人数などによって異なりますので、一概にいえません。各自治体の窓口やホームページで調べていただければと思います。

生活保護については、不正受給の問題があったことなどから、「怠け者が得をする制度」などという誤った認識が広がっています。自治体によっては、貴重な財源を生活保護に回さないよう、法的には受給要件を満たしている人に対して、あの手この手を使って受給をあきらめさせようとする「水際作戦」が横行しています。

筆者も、違法不当な水際作戦で、必要性が高いにもかかわらずなかなか受給できない人たちの相談を何件も受けてきました。世間の偏見も強いようです。

貧困層が生まれることは、資本主義をとっている以上当然のリスクともいえます。受給資格がある人が正当に生活保護を受給できるよう、国や自治体には、この場を借りて強く求めたいと考えています。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)

*ikuhisa / PIXTA(ピクスタ)

 

寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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