■どのような質問が違法になる?
職業安定法第5条の4および平成11年労働省告示第141号によると、労働者の募集を行う者は、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集」しなければいけません。つまり、『業務と関係無い情報は収集してはいけませんよ。』ということになっております。
上記告示には、具体的に原則的には収集してはいけない情報として、
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
- 思想及び信条
- 労働組合への加入状況
の3種類が列挙されています。こういった情報については、「特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではない」と、かなり限定的に例外を認めています。
ただ、実際には上記3種類に関する質問が全くないとは言い切れないでしょう。企業としてコンプライアンス遵守の意識が高まってきている昨今においても、面接官個人の意識としてはそこまで配慮が行き届いていないというケースも有り得ます。
■実際に違法な質問を受けたら?
万が一、面接において違法な質問を受けた場合の対処法は、非常に難しいと思います。正直に答えたら答えたで、その回答を理由に不採用とされてしまうかもしれません(もちろん、その理由での不採用自体は違法ではありますが、「別の理由で採用には至らなかった」と説明されてしまえば真偽を解明することは非常に難しいといえます。)。
一方、「そのような質問は違法ですので答えません。」などと回答を拒否した場合、人事採用の担当者に「気難しい人だ。」という印象を与え、職場の和を乱しかねない人物だとして不採用となってしまうかもしれません。
また、そもそも緊張する面接の場で、取りようによってはというレベルの微妙な質問に対して、「この質問は上記3類型に含まれる質問かどうか」ということを瞬時に判断して回答することは、非常に難しいことだとも思います。
そういったことを考えると、残念ながら、どんな違法な質問に対しても使える100点の答えなんてものは存在しないと言わざるを得ません。そこで、あくまでも「自分が面接を受けたとしたら…」と仮定して考えてみます。
・明らかに違法な質問を受けた場合
例えば、「お父さんは何の仕事をしていますか?」とか、「支持政党はどこですか?」といった、明らかにアウトな質問を受けた場合、「お言葉ですが、その質問は御社の業務にどのような関連性があるのかをまず明確にしていただけませんでしょうか?」などと受け答えすると思います。
もちろん、「理屈っぽいタイプだな」などと一方的に悪い印象を与えてしまうリスクはあるとは思いますが、一方で「上司や先輩のミスや不正に対してもはっきり自分の意見を言える人物」という高評価を得られるかもしれません。
仮に結果として不採用となったとしても、「面接でこういった質問を投げかけてくる会社に入っても後々苦労するだろう」、と自分を納得させて前向きに考えるべきかと思います。
・違法かどうか微妙な質問を受けた場合
例示することも難しいですが、その場でアウトかセーフかを自分で判断することが難しい質問を受けた場合、とりあえずは「素直に答える」という選択をすると思います。
職場は、多数の従業員が一緒に働く場であることが通常ですから、一定程度のコミュニケーション能力というものは必要であり、採用する側も当然そういった部分については面接において確かめたいのではないかと考えるからです。
ですので、実際そのような場面に直面したら、あまり深く考えずに、素直に答えざるを得ないだろうというのが正直なところです。回答による影響が気になった場合は、これも正直に「この質問は採否に影響するのでしょうか?」と素直に聞いてみても良いでしょう。
「採否には影響しない。」と言質をとることで、確証を得ることにはならないかもしれませんが、少なくとも釘を刺す意味はあると思います。「影響します。」と答えられた場合は、なされた質問とそれに対する回答を控えておけば、後になって弁護士等に相談する際にも有益な判断材料になると思います。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)
*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)
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