日常生活で「偽名」を使っても罪にはならないって本当?

■「偽名」使用が違法になる場合

このように、偽名の使用は一般社会でも広く行われていることであり、何も特別なものとはいえません。そして、偽名の使用が違法であると一般的に言うことはできません。

偽名というと、私文書偽造罪(刑法159条1項)になるのではないか、と考える人もいるかもしれません。

しかし、「偽造」とは、名義人(表示されている名前)と作成者(偽名を使った人)との人格の同一性に齟齬を生じさせるものをいいます。

偽名は偽名を使った人(作成者)と一致しているため、偽名をつかったからといって、そのまま「偽造」といえるわけではありません。(※もちろん全てのケースで「偽造」に当たらないというわけではなく、違法になる場合もあり得ます。)

 

■公正証書原本不実記載等の罪

では、明確に違法になる場合はあるのでしょうか。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせた場合、公正証書原本不実記載等の罪に当たります(刑法157条)。

したがって、たとえば戸籍簿、住民票、登記簿などに偽名を使用した場合のほか、公証人に公正証書を作成してもらう際に偽名を使用すると、これが成立し得ることになります。

 

■旅館業法違反

旅館業法という法律があります。

その6条1項は「営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載し、……なければならない。」としており、宿泊者がこれをきちんと告げないと、「拘留又は科料に処する」とされています(同法12条)。

したがって、宿泊施設にこの点をきちんと告げないと、違法になる可能性があります。もっとも、この罰則が適用された例は聞いたことがないので、実際上摘発される例はごく例外的な場合だけだと思います。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

*Graphs / PIXTA(ピクスタ)

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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