■合理的な区別は差別に該当しない。
以前にも解説したとおり、日本国憲法は、第14条で「法の下の平等」を定めており、人種や性別、社会的身分、信仰等様々な事情に基づく「差別」を禁止しています。そして、これは、公権力と国民の間だけでなく、その趣旨が、私人同士の関係でも適用されると考えられています。
しかし、14条で禁止されるのは「不当な差別」です。「合理的な区別」については、差別に当たらず禁止の対象にはなりません。
例えば、女性に対してだけ出産の前後に「産休」をとることができるようなシステムを導入することは、女性や生まれてくる子供の健康のために必要な「合理的な区別」と考えられています。「不当な差別」に該当するとはいえません。
■「子ども料金」は合理的な区別といえるか?
では、電車料金や施設などの利用料金について、子ども料金を安くするのは、どのように考えるべきなのでしょうか。
一般に、子どもは、大人よりもはるかに少ない財源(お小遣い)で、日々の生活をしていかなければなりません。
また、小学生や中学生の電車料金や施設の利用料金は、そもそも「親のお財布」から出てくることが、一般的に見て非常に多いといえるでしょう。子どもについて大人と同じ料金を必要としてしまいますと、結局は「親」の家計が圧迫されることとなり、個々の家庭の財政状況が悪化することになります。
節約するために、施設や電車を子どもが利用しなくなり、公共交通機関や商業施設・公共施設など(特に子供向けの施設)の収入が結果として少なくなり、経営が立ちいかなくなるという問題も発生します。
他にも、娯楽施設の使用が控えらえることとなって、子どもの情操面の成長が阻害される危険性も指摘できるかもしれません。
子ども料金を大人と同じ価格に設定すると、様々な問題が生じることが考えられます。大人料金より安い「子ども料金」は、合理的な区別に該当し、差別には当たらないといえるでしょう。
子ども料金がいくら安いとはいえ、夏休みが終わるまでの間は、親御さんにとって家計の心配が尽きない時期といえるかもしれません。そういうときには、「宿題をしなさい」と子どもをせっついてみるのはいかがでしょうか。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
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