■ストーカー規制法の規制対象
ストーカー規制法は、(1)法律に定める「つきまとい等」を行ったものに対する警告や禁止命令、(2)同一の者に対して「つきまとい等」を反復しておこなうストーカー行為に対して刑罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)等を定める法律です。
今回の件では、まず、この男性の行ったピンポンダッシュが「つきまとい等」に該当するかどうかが問題となります。
「つきまとい等」に当たるためには、男性の行為が法律が定める8つの行為(つきまとい、待ち伏せや、連続した電話、ファックス・メールの送信など)のうちのどれかに該当することが必要です。しかし、いわゆる「ピンポンダッシュ」はいずれにも該当しない可能性が高く、したがって、ストーカー規制法違反による立件は困難ではないかと、個人的には考えます。
■他の犯罪に該当する可能性はある?
東京都迷惑防止条例にも、つきまとい等の規制が含まれておりますが、迷惑防止条例のケースでは、対象がそもそも特定のものに対する悪意の感情を充足する目的がある場合に限られています(ストーカー行為等規制法は、恋愛感情や好意に基づく場合を含みます)。
また、やはり、条文に列挙されている行為の中にはピンポンダッシュを含むようなものはありません。
今回の事件を起こした男性は、石原都知事に対する好意の感情からピンポンダッシュを行ったようですので、そもそも条例の規制対象とはならないでしょう。その他にも今回のケースを処罰対象としうる法律は見当たりません。
ただ、だからといって「ピンポンダッシュ」がどんな場合にも犯罪に該当しないというわけではありません。
例えば、ピンポンダッシュを何回も何回も繰り返して、その結果、その家の住人が思い悩んでうつ病などにり患したような場合には、傷害罪が成立する可能性があります。
また、ピンポンダッシュを繰り返すことにより、会社や商売などに支障が生じたようなケースでは、業務妨害罪が成立する可能性もあるでしょう。
やっている方は、単なるいやらがらせ・悪ふざけと思ってしていることでも、犯罪になる場合があるものです。社会で暮らしている以上、大人としてして良いこと悪いことをよく考え、節度ある行動を取ることが必要です。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
*クロロ / PIXTA(ピクスタ)
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