■窃盗または詐欺になることも
飲食行為については、窃盗または詐欺が成立すると考えます。
窃盗と詐欺は、他人の物をその他人の意思に反して奪ったかどうかで区別されます。他人の意思に反して奪った場合が窃盗で、ウソという方法で他人をその気にさせて奪った場合が詐欺といった感じです。
テーブルに置かれているものについて参加者が自由に取って食べていいという形式であれば、主催者の飲食物を「主催者の意思に反して」自分の支配圏内(腹の中)に移したということになり窃盗罪が成立します。
窃盗の場合、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」といった形で処罰される可能性があります。
参加者の求めに応じてホテルの人や主催者側の人が食事を取り分けて提供したり飲料が入ったグラスを提供したりするという形式であれば、ホテルや主催者にウソをついてその気にさせて飲食物を提供させたものとして詐欺罪が成立します。
この場合、自分は招待客ですと口で言わなかったとしても、招待客を装って飲食物の提供を求めるという行動自体が詐欺罪の詐欺行為(ウソ)に当たります(挙動による詐欺)。
手渡しでお土産をもらって帰る行為についても同様の理由により詐欺罪が成立します。
詐欺の場合、「10年以下の懲役」といった形で処罰される可能性があります。
デパ地下で買う気もないのに試供品を食べ歩く場合とは事案が全く異なります。モラルだけの問題では済みませんので止めましょう。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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