仕事で知った芸能人の個人情報・・・家族に話しても違法になる?

先日、ある金融機関の従業員が有名人の来店とその有名人の住所を入手したことを娘に電話で話し、このことを娘がツイートしたために大騒ぎになり、金融機関が対応に追われたという事件が話題になりました。

インターネット上では「このご時世にまだ個人情報流出の重大さがわかっていないのか……」というような意見が多数を占めていましたが、家族に対してはつい気が緩んで業務上知った秘密を話してしまう人がまだまだいるのでしょう。

そこで、今回は、業務上知った秘密や個人情報を家族に話すのはNGなのか等について解説したいと思います。

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●個人情報の社外持出しは絶対ダメ

今回は、もし母親が業務上知った有名人の来店情報や個人情報を家族に話さなければこんなことにはならなかったでしょう。

金融機関はもちろん、一般的な会社では、個人情報を社外へ持ち出すことを禁止し、守秘義務に関する誓約書を従業員に提出させることが一般的ですから、母親の行為は守秘義務(契約)違反に当たります。

そして、守秘義務違反を行った従業員は懲戒や損害賠償請求の対象になりますので、安易な気持ちで個人情報を社外に持ち出すことは絶対にやめましょう。

 

●家族に有名人の来店情報を知らせるのもダメなの?

業務中に有名人が来店したことを不特定多数の第三者に知らせるのは何となくアウトな気がする人も、家族に対しては気が緩んでしまうと思います。

公開ロケ等で有名人が来店していた場合であれば、帰宅後に家族に対してこれを話しても違法となることはならないでしょう。

しかし、有名人がプライベートで来店していた場合、その情報は業務上知り得た秘密に当たり得るため、厳密には家族に対して話すことも禁止されます。

また、そもそも業務中に来店情報を電話やLINE、SNSで家族に知らせることは、労働者の職務専念義務違反に当たることが多いです。

したがって、家族に有名人の来店情報を知らせることは、場合によっては懲戒や損害賠償請求の対象になり得ますので、原則として行わないほうがよいです。

 

●家族から聞いた来店情報や個人情報をSNSに流すことはどうか?

「今日の10時くらいにお母さんが働いている○○銀行△△支店に、□山□治が美人と一緒に来てたんだって!うちも見たかった(ToT)」というようなことをSNSに投稿した場合は、理屈としてはプライバシー侵害に当たり、損害賠償請求の対象になります。

ここで、プライバシー侵害に当たるか否かのポイントは、(1)プライベートでの来店か、(2)その情報は一般的に人に知られたくない類のものか、(3)一般的に知られている情報かという点にあります。

上記の例でいうと、□山□治であれば美人と一緒に行動することは珍しくないかもしれません。しかし、場所が銀行なだけにプライベートの来店である可能性が高く、また、□山□治は結婚しておらず彼女もいないことになっているので一般的には知られたくない情報といえましょう。

なお、ここで挙げた例はフィクションであり、実在する人物とは一切関係がありません。

プライバシー侵害になるかどうかは判断が難しいですので、自慢したくなる気持ちを抑え、家族から聞いた来店情報や個人情報についてはSNSに投稿しないほうがいいでしょう。

以上のように、たとえ家族であっても業務上知った秘密や個人情報を話したり、家族から聞いた情報を不特定多数に拡散したりすると思わぬ不利益を受けることがありますので、秘密や個人情報は誰にも漏らさないほうが安全です。

 

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)

木川 雅博 きかわまさひろ

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1-21-8 弁護士ビル303

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