過酷な規定とも言われる「事務管理」とはどんなもの?

道端で人が突然倒れてしまったのをたまたま目撃し、周囲に誰もいなかったので助けたものの、逆に倒れた人の病状が悪化してしまったような場合、その人から損害賠償を受けたりするのでしょうか。

中途半端に助けて悪化した場合、助けた人の責任が問われるから助けない方が良い、などという論調もあるようです。

実際、法律ではどのように決められているのでしょうか?

男女

●「事務管理」とは?

民法ではこのような行為を「事務管理」と言います。

法律上、他人の事務をやる義務はないが、好意で他人の事務を始めるようなケースを指します。たとえば、留守中の隣の家が台風で窓ガラスが割れてしまったので、隣人に頼まれたわけではないが、隣人の代わりに業者に注文して窓ガラスを修理する場合、などのような行為です。

そして、事務管理のうち、本人の身体、名誉、財産に対する急迫の危害を免れさせるために行う事務管理を「緊急事務管理」と言います。冒頭の例などはまさにこの緊急事務管理に該当するものと思われます。

事務管理が成立すると、事務管理をする人には高度な注意義務(法律用語では「善管注意義務」と言います。)が発生します。

要は、事務をやる義務はないのだが、一旦事務をやり始めたのであれば、手を抜かず一生懸命やりなさい、ということです。そして、事務の必要がなくなるまで事務を継続しなければなりません。

 

●倒れている人を助ける場合、ちゃんと面倒を見る必要がある

冒頭の例で説明すれば、倒れた人を発見して何もせずに立ち去ったとしても法律上は違法ではないが、仮に一旦心臓マッサージをし始めた以上は、救急車が到着するか本人が意識を取り戻かするまで、一生懸命心臓マッサージを続けなければなりません。「時間がないのでここでやめます」などという勝手なことは許されません。

問題は、いい結果が出ればいいのですが、救助したことによって病状がより悪化したり、あるいは最悪の結果が出てしまったりした場合です。善意で始めた行為なのに損害賠償責任を負うというのはややかわいそうな気がしますが、法律上事務管理をした人は、「無過失」が要求され、不注意で損害を与えてしまった場合は賠償しなければなりません。

 

●一般的には責任は負わないが……

ただし、緊急事務管理の場合は、緊急事態という性質上、「重大な過失」がなければ賠償義務は負わないとされています。

ですので、すぐに119番に電話した、心臓が停止しているのを確認し心臓マッサージをした、などの行為を一生懸命やっている限り「重大な過失」はないと思われますので、仮に倒れた人の病状が悪化したり、最悪の結果をもたらしたりしたとしても賠償義務は負わないことになります。

事務管理というのは、善意の行為でありながら、報酬請求権もなく、逆に事務を行った人は結構重い責任を負うことになるので、やや過酷な規定ではないかという疑問の声も上がっていることは事実です。

世知辛いとは思いますが、法律の立場としては、人助けをする場合は慎重に、ということでしょうか。

 

*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)

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山口 政貴 やまぐちのりたか

神楽坂中央法律事務所

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