■タクシー運転手は適切なルートを選択しなければならない
そもそもタクシー会社と乗客の間では「旅客運送契約」という契約が成立しています。この契約の内容ですが、運転手は乗客を安全に目的地まで運び、その際、特に乗客から指示がない限り、目的地までもっとも早く到着する合理的なルートを選択する、という内容です。
もちろん、都心部であれば目的地までのルートは複数あることが多く、どのルートを通るかは運転手の裁量、つまり運転手の自由です。
ですので、乗客が特にルートを指定しなければ運転手はどのルートを通っても問題はありません。
とはいうものの、いくら運転手が自由にルートを決めてよいということであっても、運転手が道をわからなかったり間違えたりして遠回りした場合でもメーターに表示された料金を支払わなければならないのでしょうか。
■多少の増加額分は支払わなければならない
結論を言えば、通常の料金を大幅に超えた部分については、料金の支払い義務はないものと思われます。
しかしながら、タクシーの料金は、同じ距離を走ったとしても、道路事情等により毎回きっちり同じ料金になることはありません。
ですので、仮に運転手が道を間違えて遠回りし、通常の料金より若干料金が増えたとしても、それだけで増額分の支払いを拒否するのは難しいでしょう。
道を間違えていなかったとしても若干であれば料金が増額する可能性があるからです。
■不当に料金が高い時にはタクシー会社に連絡を
しかしながら、これが通常の料金より相当高額になった場合は、これは通常の料金の上限を超えています。
ですので、旅客運送契約違反が考えられ、増額分については支払いを拒むことができると考えられます。
もっとも、タクシーの運転手さんには料金の決定権がありませんので、その場ではメーターに表示された金額を乗客に請求するしかありません。
増額部分の支払いについては後日タクシー会社と乗客との間の話し合いということになるでしょう。
このようなトラブルを避けるためにも、乗客の方で目的地までのルートを指定するか、ルートがわからない場合は事前に運転手にだいたいの料金を聞き、了解した上で乗車したほうがよろしいのではないかと思います。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)
写真:popsong / PIXTA(ピクスタ)
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