厚生労働省は、違法な長時間労働を強いる「ブラック企業」の企業名を行政指導の段階で公表するとのことです。
その対象は、大企業で、1年間に3つ以上の事業所で是正勧告を受けた企業が対象となるとのことですが、果たして、効果はあるのでしょうか。
厚労省によると、長時間労働を防ぎ、企業による自主的な改善を促すのが狙いとのことです。企業名の公表についての扱いは、従来は原則として労働基準監督署などが書類送検した場合のみとのことです。
●今回の基準は緩い?
労働基準法を守らせようという一環とも思いますが、逆に三六協定を結べば、長時間労働も可能となりえます。
残業代を払いさえすれば長時間労働は違法ではなくなり、その結果「過労死」を招くことになるという問題と、ただ単に違法に労働者を使い捨てにする状態を解消したいという問題とが存在していますので、両にらみで運用しなければならないですね。
とすると、過労死ラインが月80時間とされていますので、月100時間超という今回の基準は緩いかと思います。
●しっかり運用されるのかは疑わしい
また、行政による運用ですので、多分に恣意的な扱いがされるのではないかという疑念も払拭できず、その運用をチェックする機関も必要なように思います。
今回の運用は、恐らく後者の違法状態を解消したいという目的のためのみに焦点が当てられているようで、その意味では、諸手を挙げて賛成という訳にもいきませんが、雇用を希望する人間に対する情報提供量が増えると言う意味では、このような運用も是かなという気もします。
暫くは、厚労省の運用を大企業の従業員が自主的にチェックをし、様子を見ていくしかないのかな、と思います。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)