●子どもに「人権」はあるのか?
子どもも「人」であることに変わりはないので、人権は子供にももちろん保障されます。
しかし、子どもは、大人と違って、社会経験に乏しく精神的にも肉体的にも成熟していないため、大人によって保護されることが必要です。そして、その「保護」のために、大人よりも幅広く権利が制約されると考えられています。
例えば、暴力シーンやセックスシーンやそのような描写がある映画のDVDや本、写真集などを図書館が一定年齢以下の未成年者に貸し出すことを禁じることは正当化されるでしょう。子どもが、その映像や描写を見て刺激を受けて、精神的なトラウマを負ったり、あるいは非行に走ったりしないよう「保護」するためです。
また、未成年者の飲酒や喫煙が法律で禁止されていることも、この「保護」の観点から正当化されます。
●子どもに対するファッションの強制は法律上問題ないのか?
この点については、判断が非常に難しいですが、強制の程度にもよるのではないかと思います。
例えば、性同一性障害などの問題がないにもかかわらず、嫌がる男の子に対して、親がスカートやフリルが付いた洋服など女の子らしい格好を無理やりさせるようなケースは、頻度や強制の仕方(従わないと無視する、食事を与えないなど何らかの制裁を与える)によっては、虐待の一種になると考えられます。
染髪についても、例えば皮膚の疾患やぜんそくなど疾患が出始めている、あるいは本人が嫌がっているにもかかわらずさせるような場合には、虐待と評価されることとなるでしょう。
学校や幼稚園から児童相談所に通報されれば、その子は保護の対象になる可能性があります。親は、強要罪や傷害罪、暴行罪に問われ、刑罰を受けることになりかねません。
●子どもの「ファッションに対するこだわり」も尊重すべき
子どもは、非常に繊細で、また非常によく親のことを見ているものです。
本当は嫌でも、親に嫌われたくない、親に怒られたくないと顔色を窺って、嫌だと言い出せないことも少なくありません。そのうち、嫌なファッションをさせられていることによってストレスがたまり、精神的な疾患になってしまったり、病気になってしまったりする可能性もあります。
また、ファッションは人間のポリシーが現れるものでもあり、たとえ子どもであっても、子どもなりにこだわる部分が何がしかあるものです。どのような格好をするかは、大人であれ子どもであれ、本来本人が決めるべき問題であり、親が「こういう格好をするように」と強要することは、子どもの人格を否定することにもつながりかねません。
流ちゃろくんがホストの格好を本心でどう思っているのかはわかりませんが、個人的には、流ちゃろくんに服装に対する自主性を尊重してほしいと考えます。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
*画像はツイッター”@chiimelo74″さんの掲載した画像より引用し加工したもの
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