酔いつぶれた人を放置して逮捕…「保護責任者遺棄致死罪」ってどんな犯罪?

横浜市の男子高校生3名が、河川敷で友人に対して暴行し、酔いつぶれている被害者を放置した結果その仲間が溺死したという事件で、被疑者の3名が暴行罪・保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたとのことです。

この「保護責任者遺棄致死罪」、たまにニュースなどで耳にしますが、どういった犯罪でしょうか。ご説明いたします。 酒酔っぱらい男

●「保護責任者遺棄致死罪」ってどんな罪?

「保護責任者遺棄致死罪」は、「保護責任者遺棄罪」を犯した者が、それにより人を死亡させた場合に成立する犯罪です。

保護責任者遺棄罪は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者(「要扶助者」と総称します。)を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったとき」に犯罪が成立します。

まずは、(1)「遺棄」とはどういう意味か、(2)「生存に必要な保護をしなかった(不保護)」とはどういう意味か、という点をご説明します。

(1)「遺棄」とは、「要扶助者を場所的に移動させて新たな危険を作ること」と「保護しなければ生命の危険がある要扶助者を放置して立ち去ること(置き去り)」という二つの意味を含む概念です。

(2)「不保護」とは、「要扶助者と場所的な隔離をとらずに生存に必要な保護をしないこと」を意味します。

 

●具体的な例で説明すると……

「要扶助者を場所的に移動させて新たな危険を作ること」:「赤ちゃんを山奥に捨てに行くこと」

「保護しなければ生命の危険がある要扶助者を放置して立ち去ること(置き去り)」:「赤ちゃんを家に置いたまま何日間も家に帰らないこと」

「要扶助者と場所的な隔離をとらずに生存に必要な保護をしないこと」:「赤ちゃんに飲食物等を与えない等世話をせずに放っておくこと」

といった感じになります。少しはイメージできたでしょうか?

 

●保護責任者となる人はどんな人?

次に気になるのは、「どんな場合に人は『保護責任者』になるの?」という点です。「保護責任者」の典型的な例として分かりやすいのは、「赤ちゃんの世話をするお母さん」でしょうか。

母親が育児放棄をして乳幼児を死なせたというニュースは比較的よく耳にすると思います。この場合に、育児放棄をした母親には保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があります。母親が「保護責任者」になるのは、母親には子を監護すべき民法上の義務があるからです。

 

●「酒に酔った人」がいた場合、その他の人が「保護責任者」となる場合がある!?

結論は、「YES」です。

人が第三者に対して「保護すべき義務」を負う場合について、裁判例では、法律上の義務や契約上の義務にとどまらず、「慣習」や「条理」、「先行行為」等に基づいて「保護義務」が生じるとされています。

裁判実務では、かなり広い範囲で「保護義務」を認めているといえます。「先行行為」の例でいえば、ホテルの部屋で女性に覚せい剤を打ち、その女性が錯乱状態になったのに置き去りにした人が「保護責任者」となるという判例があります。

「お酒に酔った人」の例でいえば、ガールズバーのオーナーが酔い潰れて横になっていた未成年の女性従業員に上着をかけて寝かせていたという事例で、オーナーは「保護責任者」にあたると判断した裁判例もあります。

 

●「保護責任者」となる基準はちょっと曖昧?

『具体的に基準を示せ』と言われれば非常に難しい問題ですが、様々な裁判例を見ていると、「一旦、保護を行う行動をとったかどうか(保護を引き受けたか)」、「保護を必要とする状況を作ったかどうか」、「その人が保護しなければ被害者の命が助からなかったといえるかどうか」、「保護をすることが容易な状況であったか」といった要素を総合的に検討して、具体的状況に応じて保護責任の有無を判断するよりほかないと思います。

「酔いつぶれた人」についていえば、酔いつぶれて道端に倒れている赤の他人をそのまま見過ごしていったとしても、およそ保護責任が生じるとは考えられませんが、一旦介抱して車に乗せたけど、やはり面倒になって違う場所に放置した場合には保護責任が生じるといえるでしょう。

 

*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)

河野先生
河野 晃 こうのあきら

水田法律事務所

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