接客や窓口業務などを担当する女性が、仕事に対する苦情を名目に客の男からつきまとわれる「クレームストーカー」の被害が増加し、企業や自治体が対応に苦慮しているようです。
ストーカーというと、「ストーカー規制法」で規制すればよいと思うかもしれませんが、「クレームストーカー」はストーカー規制法の対象とはなり辛いという側面があります。それはなぜでしょうか?
ストーカー規制法による規制の対象となる行為は以下の様に定めています。
「つきまとい等」
「ストーカー行為」
の二つです。
これらを詳しく解説してみましょう。
●「つきまとい等」とは
特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族などに対して、つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、面会要求、著しく粗野又は乱暴な言動、乱暴な無言電話、メール送信等などを行う行為をいいます。
●「ストーカー行為」とは
同一の者に対し「つきまとい等」を繰り返して行うことをいいます。但し、付きまとい等の中には、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限るものがあります。
このようにストーカー規制法では、「つきまとい等」と「ストーカー行為」が規制されているのですが、いずれも恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われていることが必要です。
●クレームストーカーの特殊性
ところが、クレームストーカーの場合、表向きはクレームなので、恋愛感情その他の好意感情などが現れてきません。つまり、クレームストーカーについては、ストーカー規制法で対処するのが難しい面があるようです。
しかし、だからと言って、会社としてクレームストーカーの対応を一社員に任せておくわけにはいきません。
会社としては、社員の安全を確保する必要があるからです。
そのためには、クレーマー対応と同様、クレームストーカーに対しても、会社は組織として対応していることを毅然と示す必要があります。
そして、クレーム行為も度が過ぎて業務が停滞するような場合には業務妨害罪、面会を不当に要求する場合には強要罪、大声を出して従業員を脅したりした場合には脅迫罪、不当な金品の要求をした場合には恐喝罪など、犯罪行為に発展する場合もありますので、クレームストーカーが出てきた場合には、速やかに警察に連絡する方が賢明です。
そして、警察が入ることを想定して、クレームストーカーからの電話やメール、面会要求行為等については、録音、ビデオ撮影など証拠として保全しておくことがよいでしょう。
また、従業員対応で手をこまねくような場合には、窓口を弁護士に変えて、弁護士に対応してもらうようにするのも有効な方法であると思います。
*著者:弁護士 桐生貴央(広尾総合法律事務所。「人のために 正しく 仲良く 元気良く」「凍てついた心を溶かす春の太陽」宜しくお願いします。)