弁護士としてインターネット関係の案件を多く扱っていると「自分の書込みを削除したい」という相談がしばしば寄せられます。たとえば、
・カッとなって知り合いの誹謗中傷をしてしまったが冷静になり削除をしたい
・間違って知人の個人情報を書き込んでしまったので削除したい
・自分の個人情報を含む内容を書き込んでしまったので削除したい
・過去の恥ずかしい書き込み
などなどです。
このような書込みを後になって消したいと思った際、削除することはできるのかどうかを説明します。
■自分の書込みを削除する権利はない
素朴な感覚として、自分が書き込んだものである以上、その削除や編集ができるのが当然だと考えている人が大多数だと思います。しかし、自分で掲示板などに書き込んだものを削除する権利は、自分にはないのが通常です。
削除を請求するためには、削除を請求する人が自分の権利を侵害されたといえることが必要です。
しかし、自分で書込みをしている場合、どのような内容を書き込んだといっても自分で書込みをしている以上、自分の権利を侵害しているということは、基本的にできません。
したがって、権利侵害がないため、削除することができないということになります。
「書込みには著作権がある以上、編集ができるはずだ」という趣旨のことを言われることもあるのですが、掲示板などに書き込む際に普通は著作権を放棄するか、掲示板側に著作権を譲渡するという規約になっています。したがって、著作権を理由にすることも難しいということになります。
このことは、2ちゃんねるも同様です。したがって、削除を依頼しても、原則としては、自己責任として削除を拒否されることになります。
■削除させるには
このように自分で削除することは難しく、削除するには権利を侵害された人からの請求が必要です。
そのため、たとえば、誹謗中傷をしてしまった人に事情を話して、謝罪するとともにその人から削除をしてもらう、費用がかかる場合にはその費用も負担するということが必要になります。
このように説明をすると、放置してしまおうと考える人が多いようで、その後問い合わせがパタリと止まることが普通です。しかし、これが現実です。
自分が書き込んだことが原因だということをよく考えて、安易な行動は控えるということが重要でしょう。
なお、削除に応じてくれるサイトもありますので、削除依頼自体が公開される仕様になっていないかどうか、ということをよく確認して削除を依頼してみる、ということはしてみてもよいのではないでしょうか。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)