秋葉原で2008年に発生し、7人が死亡した無差別殺傷事件で、殺人などの罪に問われた加藤被告の死刑が確定しました。
ところで、「最高裁が上告を棄却して死刑が確定」と報じられましたが、上告を棄却とはどういう意味なのでしょうか。上告ができないということがなぜ発生するのでしょうか?
そもそも上告とは何なのか、上告ができる条件とは何なのかを含めて解説していきます。
■上告とは?
上告というのは、高等裁判所がした第一審または第二審の未確定の判決に対する不服申立てのことです(ただし、刑事訴訟の場合の上告)。
要するに、上告というのは、高等裁判所の第一審判決や第二審判決に不服として取消しや変更を求める申立てということです。
秋葉原殺傷事件において、被告人は、地方裁判所の第一審で死刑判決を受け、不服として控訴(=第一審に対する不服申立て)しました。
その後、被告人は、高等裁判所の第二審で控訴を棄却され、第二審でも死刑判決が維持されました。
被告人は、それでも不服として最高裁判所に上告していたわけです。
■上告できる場合は限られてる
最高裁判所に上告できる場合は限られています。
憲法に違反する場合か過去の判例に違反する場合だけです。
それ以外の理由も付けて上告した場合、最高裁判所に無視されることがほとんどですが、以下の場合、希に職権で判断してもらえます。
・判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある場合
・刑の量定が甚だしく不当である場合
・判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある場合
・再審の請求をすることができる場合にあたる事由がある場合
・判決があった後に刑の廃止、変更、大赦があった場合
被告人が行う上告の多くはこの職権判断を期待してのものです。
■上告棄却とは?
棄却とは、事件についての請求を排斥することです。
上告棄却は、上告が不適法、あるいは上告に理由がないという理由により、上告を排斥することです。
上告が不適法である場合は、決定で上告が棄却されます。以下の場合です。
・上告の申立てが法令上の方式に違反していた場合
・上告の申立てが上告権消滅後に行われた場合
・申立ての理由が明らかに法定の上告理由に該当しない場合
上告に理由がない場合は、判決で上告が棄却されます。
■上告棄却されるとどうなるか?
上告棄却の判決から10日経過した場合、原則として最高裁判所の上告棄却の判決が確定します。
これにより、法律が予定していない再度の不服申立ては許されなくなってしまいます。
法律が予定している不服申立てとして再審があります。
再審は、確定した判決に再審事由に該当する重大な瑕疵がある場合に、この再審事由を主張して確定判決の取消しと事件の再審理を求める手続です。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)