「残業代ゼロ法案」がどういった内容かご存知でしょうか?
言葉は聞いた事があるかもしれませんが、内容については詳しくしらないという方が多いかもしれません。
「残業代ゼロ」とだけ聞くと「ありえない!」と思う方も多いかもしれませんが、もちろんメリットもあるため、この法案について議論されています。
それでは、この法案がどのような内容なのか、メリットだけではなく、デメリットは何なのかについて解説していきます
●メリット:労働時間ではなく成果で給料が変わる
残業代ゼロ法案は、日本型新裁量労働制という正式名称で、労働時間に縛りがなくなり、成果だけが給料の評価基準になります。
つまり、現在の労働基準法は、一日8時間の労働時間を超えると、割増賃金、つまり残業代を支払わなければならないことになっていますが、この制度の対象になった従業員は、労働時間の長短にかかわらず、成果だけで評価されるようになります。
仕事ができる人にとっては、メリットの大きな制度です。
これまでは一定の成果を短時間で出す人よりも、時間がかかる人の方がもらえる給料が高かったのです。これは不合理な制度ですが、平等性の基準を労働時間に求めた結果であり、仕方がありませんでした。
その意味では、年収1,000万円以上を稼ぐサラリーマンを対象に考えているとのことで、そのような「できる」サラリーマンを競わせるのは、とても良いことのように思います。
●デメリット:サービス残業の合法化になる?
デメリットとして、サービス残業の合法化につながるということが言われ、ブラック企業の思うツボとの指摘もあったりしますが、年収1000万円以上のサラリーマンを対象にするという制限がありますので、いわゆる低賃金で違法に働かせるブラック企業の従業員には、この制度の適用はなく、デメリットはあまりないものと思われます。
ただし、残業代ゼロ法という名称だけが一人歩きしますと、世の中の全てのサラリーマンが残業代がでないかのごとき錯覚を与えることにより、悪い経営者がさらにブラックさに拍車をかけるかもしれません。この辺の啓蒙をちゃんとしないといけませんね。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)