本当の「男女平等」とは何か? 弁護士5人に聞いてみました

先日、マツコ・デラックスさんがテレビ番組で男女平等について語ったことが話題となったのはご存知でしょうか?

番組の中でマツコさんは

「これまでは男の人の基準に女の人を合わせることが平等だった」

「『男がしてることもしていいよ女も』っていう男女平等だった」

「女の人が男になろうって無理をせずに、男と同じ権利が与えられる世の中にならないと、ほんとの平等じゃない」

と述べ、多くの共感を得ているようです。

男女平等と謳われ久しい今日ですが、まだ実際には平等とは言えない部分もあるのが現状です。今回はシェアしたくなる法律相談所で執筆されている弁護士の中から5名の先生に、「男女平等とは何か?」「どうするべきなのか」を聞いてみました。

男女平等

東城 聡弁護士 東城聡

「平等」とは、自由な意思による選択を閉ざす障害がない状態を指すと考えます。例えば、会社を勤め上げて役員等になりたいと思ったときに、性が障害となるのであれば、不平等といえます。

マスターカードの昨年の調査に依れば、企業・政府機関における管理職の就任数について、男性100名に対して何人女性がいる調べたところ、日本は10.5と香港(44.3)、台湾(26.3)、中国(19.4)などの世界的に見ても低く、アジア諸国と比較しても低い数字となりました。100:10.5という数字で平等というには、他の90名余りが「働かないでいい、出世しなくていい」と自由な意思で選択している必要があります。

しかし数字の圧倒的偏りからすれば、見えない障害によって道をあきらめていった人も多く居ると思われます。

一方、例えば中国では、女性の定年は一般は50歳、管理職は55歳とされるなど、法的な整備の面では日本よりも遅れています。男女平等実現には、法の整備などのハード面だけでなく、社会のコンセンサス・文化的な醸成といったソフト面の視点も必要なのかもしれません。

 

星野 宏明弁護士 星野宏明

競争機会の平等で十分であると考えます。男女平等に限らず、経済格差など社会におけるほとんどの不平等の問題は、機会の平等、選考基準の平等を目指すべきとの考えです。

アファーマティブアクション(※1)ではなく、同等の能力がある女性が性別でマイナス評価されることなく、同様の選考基準で、能力があれば男性と同じように昇進するのが資本主義のあるべき社会と思います。

アファーマティブアクションは、かえって女性の競争力を弱め、社会の生産性を低下させるおそれがあるのではないでしょうか。

男性側からの視点が強い見解だと思いますが、不合理な差別や女性特有の障壁は撤廃した上で、選考基準の平等、機会の平等を重視すべきだと考えます。

※1.アファーマティブアクション:女性や少数民族など、社会的弱者を優遇する制度

 

星 正秀弁護士 自画像

男女平等は、憲法14条に定められています。性別による差別を禁止しています。

その意味は、国や地方自治体が性別によって国民や住民の扱いに差別を設けてはいけないということです。また、多数説は、国や地方自治体以外の私人も性別によって差別してはいけないと解釈しています。

問題は、何が「差別」にあたるのか、です。良く言われるのは、「合理的な差別」は許されるということです。例えば、女性専用車両などは、特別に女性を優遇するようにも思えますが、痴漢被害の多発などを考慮すると合理的な差別だと言われます。

昔は、女性を保護するために、女性の深夜に仕事を行うことは禁止されていました。その当時は、それが合理的だと考えられていました。しかし、現在では、そのような過剰な女性保護が女性の社会進出を妨げると考えられるようになり、女性も深夜労働が出来るようになりました。

国によっては、女性の社会進出が日本以上に進んでいるところもありますし、逆のところもあります。また同じ国でも例えば東京は女性の社会進出が進んでいる一方で福岡では進んでいないという場合もあるかと思います。

このように、何が合理的な差別か否かは、時代と場所によって変わります。

私は、新米弁護士のころ、女性の人権擁護団体の顧問弁護士をしていましたので、一般の方が考える以上に女性差別を解消すべきと考えていますが、それが正義だと他人に強制するつもりはありません。大いに議論すべきだと思います。

 

 

寺林 智栄弁護士 寺林写真

この問題に対する回答は、極めて難しいと思います。

私なりに言うとすると、「性別を意識することなく誰もが平等に社会参加する機会を与えられること」が男女平等ではないかと思います。

確かに、子供を産む機能を持っている女性は、それに付随して社会参加できない期間が当然にあります。しかし、だからといって、全ての女性が子供を産むわけではないですし、どれくらいの期間休業が必要なのかも、個人個人の事情によります。

ですから、こういった事情を一括りにして「女性のハンデ」と捉えずに、社会全体が男性も含めて等しく「個人の事情による融通」を効かせられるようになるのが理想だと思います。

「男女」という枠組みでなく「個」という枠組みで、参加の機会を考慮されることが、真に男女平等な社会なのではないでしょうか。

 

川浪 芳聖弁護士 川浪芳聖

日本国憲法14条1項は法の下の平等を定めて性別による差別を禁止しており、民法2条は両性(男女)の本質的平等を宣言しています。

もっとも、実社会においては未だに就職等の場面で女性より男性が優遇されることがあり、男女で均等な取扱を実現するために積極的な格差是正措置をとることが規定されたりしています。

しかし、裏を返せば、当該措置がある以上は均等な取扱がなされていないといえるわけで、かかる措置が不要となるに至って初めて男女平等が実現しているといえるのではないかと思います。

『女性だから(又は男性だから)不利益を被っている(又は優遇されている)』と意識しないことこそが男女平等ではないでしょうか。

 

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明確な答えがある問題ではないでしょう。しかし、それぞれが何か少しでも考えて行動することで少しづつ変わってくるかもしれません。

あなたは「男女平等とは何か?」と聞かれたらどう答えますか?

シェアしたくなる法律相談所では過去にも弁護士に聞いてみたシリーズをやっています。ご覧下さい。

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