巷でよく見る「整体」や「カイロプラクティック」は、無資格で開業できるものですが、一方で国家資格である「あん摩」「指圧」などと何が違うのか、なかなか良くわかりません。
整体やカイロプラクティックは、実際には医療行為の補完的なものと位置づける立場もありますが、医療行為そのものでも医療類似行為そのものでもありません。
そこで、今回は、整体やカイロプラクティックというのは、本来どのような行為を指すのか、整体やカイロプラクティックの名の下でできない行為はどのようなものなのか、お話しします。
■整体とは何か
整体とは、体全体の骨格や間接の歪みやズレの矯正や骨格筋の調整などを、手技や補助道具を使って行う行為を指します。このような行為を施すことによって、体幹から四肢への血行の流れなどを良くして、種々の症状の改善を期待する、いわゆる「健康法」の一種とされています。
先にも述べた通り、このような整体を行うにあたって、国は資格を必要としておらず、無資格で開業することが可能です。
■整体でできないこと
整体は、先にも述べた通り、あん摩、指圧とは異なりますし、また整体師は医師ではありません。そこで、各種法律によって定められている規制に従わなければなりません。
まず、「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」においては、医業類似行為を行えるのは、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復の国家資格を持つものに限られると定められています。
例えば、脱臼や骨折している人に対して、これを正しい位置に戻すなどの矯正を行うことや、捻挫している人などに対してマッサージを行って症状を緩和することができるのは、これらの資格を持つものだけであり、整体師がこれを行うことはできません。
肩こりも疾患のひとつであるとされているため、それを治療・矯正する目的で無資格の整体師が施術を行うことは、先の規制に違反する恐れがあるといえます。
整体師は「医師」と名乗ってはいけませんし、整体師が開設する施術のための場所を「病院」「療養所」「診療所」など、病院や診療所と紛らわしい名称をつけることはできません。当然、病名の診断もできませんし、外科手術や麻酔、血圧測定なども医師法その他の周辺の法律によって禁じられています。調薬や投薬も当然できません。
■整体に頼ると危険なこと
整体によって一時的に体の不調を緩和する作用が得られる場合もありますが、肩や背中、腰の痛みは、時に重大な病気のサインであることもあります。安易に整体に頼ると、隠れた病気を見逃して命の危険にさらされることもないとは言えません。
気軽に利用しやすい整体ではありますが、実際には法的に「スレスレ」な面があることや、リスクも考えたうえで施術を受けるべきでしょう。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)