大阪の市立中学で、生徒252人分の氏名や成績等を記載した資料が、LINEを通じて24人に流出したという事件が2日、報じられています。
資料を管理していた講師が誤って生徒に渡してしまい、その生徒の友人が資料に気づき撮影、画像をLINEに投稿したという経緯のようです。
故意ではないとはいえ成績などの情報も含む個人情報を流出させた講師には何らかの処分が与えられる可能性は高いと思いますが、重要な情報と知りながらLINEで拡散させた生徒には、何らの責任もないのでしょうか。
今回のケースを参考に、不注意にも機密情報を流出させてしまった人とそれを意図的に拡散させた人、それぞれ法的にどのような違いがあるのか、検討してみたいと思います。
■過失による流出は原則として不処罰
機密情報を不注意(過失)により流出させてしまった場合、その人物に何かしら刑法上の罰則があると思っている方が多いのではないかと思いますが、実は過失による流出を処罰する法律は、現時点ではごく一部を除いて存在しておらず、機密情報の流出も処罰されません。
もっとも、これは刑事責任を問われるかどうかという問題であり、内部的に懲戒処分を受けるなどということは当然あり得ると思います。
また、流出させたことは不注意だとしても、その管理に問題があったことは間違いなく、不法行為となり得るため、会社から流出させた個人に対する損害賠償も認められることになります。
さらに、そこに他社の機密情報なども含まれていた場合には、他社からの賠償に応じる必要も出てくることになります。
■1件あたりの慰謝料は高くないものの、量が多いと膨大になるおそれ
また、流出情報が個人情報であった場合、当該個人は損害を受けるので、流出させ個人や会社に慰謝料を請求することができます。
ただ、慰謝料額は一般にそれほど高くはならず、1件あたり1~3万円程度となることが多いようです。
たとえば、個人連番の住民番号、住所、氏名、性別、生年月日、転入日、転出先、世帯主名、世帯主との続柄等の情報が流出した宇治市住民基本台帳データ漏洩事件(大阪高裁平成13年12月 25日判決)では、1件あたり1万5,000円でした。
また、住所、氏名、電話番号、メールアドレス等の情報が流出した事件(大阪地裁平成18年5月19日判決)においては、1件あたり5,000円の慰謝料が認められました。
もっとも、1件あたりの慰謝料が少ないといっても、流出量が多ければ賠償額は膨らむことになります。
■拡散させた人物の刑事責任を問うことも難しい
では、拡散させた人物はどのような責任を負うのでしょうか。
このような行為を規制する法律としては、不正競争防止法があり得ます。そうすると、拡散させることは意図的に行われているので、これに当たるようにも思えます。
しかし、同法は、意図的に流出等させることを規制しているので、すでに流出した情報を拡散させることについて、適用は難しいです。
また、同法による罰則適用には、不正の利益を得る目的や加害目的などが必要になるところ、面白半分で拡散させる人物にこのような目的があると言えるかも問題があります。
■民事上の責任は負う可能性がある
しかし、拡散させた人物も、損害賠償などの責任を負う可能性は高いです。
それが機密情報であるということは認識できることは多いと思われ、それを知りながら拡散させる行為は、流出元に損害を与える可能性を認識することができるからです。
拡散する人は面白半分で拡散するのかもしれませんが、それには責任が伴う可能性があることは十分認識しておく必要があると思います。
今回のケースで拡散に使われたLINEについて、過去に「LINE公式装うメールで出会い系へ「誘導」どんな罪?」という記事も書いたのであわせてチェックしてみてください。