あの「音・色」まで商標に!? 知財法改正案の問題点

このほど、色や音を商標として登録できるようにするため、商標法を改正する方針を決定したと政府が発表しました。

この改正案は、新しい方式の商標を認めるもので、企業のブランディング活動に大きな影響を与えることが予想されます。このような新しい商標は、アメリカやヨーロッパ等ではすでに認められています。日本でも国際的な基準に足並みを揃えたといえるでしょう。

ブランディングに積極的な企業は、国際的な流れに沿った今回の改正案について既に検討を行っているでしょう。そうでない企業も、他者の商標権を侵害することがないように営業する必要があります。

商標

■改正案は新しい企業ブランディングを後押しする

現行の商標法では、色彩だけを商標として登録することはできません。色彩を商標に取り入れるには、文字、図形、記号もしくは立体的形状と組み合わせなければなりません。色彩は副次的な位置づけなのです。

ところが、改正案では、色彩そのものや、音そのものを単独で商標として登録できるようになります。商標の定義そのものを拡大する改正であり、色彩や音の商標での位置づけを強めます。

今までも、色彩について、不正競争防止法の「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)として間接的に保護される場合はあり得ましたが、改正案は、正面から色彩や音によるブランディングを後押しすることになります。

その結果、商標として登録できる内容が広がります。企業は、「この色はあの製品だ。」といったブランディングを行いやすくなりますし、複数の商品の一体感などをより効果的に活用していくことができるでしょう。

視覚によらない音の商標は、新たなブランディングの手法を生み出して行くかもしれません。

■気付かないで商標を侵害してしまうかも?

企業が育ててきたブランドイメージを保護するために、商標として保護する範囲を拡大することは、企業に信用を与え、適切な競争を行うために大切なことです。しかし、気をつけなければならないこともあります。

商標は全て公開されていて調査することが可能ですが、商標登録されている色彩や音、そして似たような色彩や音をうっかり使ってしまう事例が今後出てくるでしょう。

特に色彩は、ロゴなどと異なり、多くの種類を一度に使用することが可能です。現行法で定められている文字、図形、記号もしくは立体的形状など以上に、他者の色彩商標を不注意から使用してしまう事例が増えることは避けられません。

■円滑な運用にはまだまだ時間がかかる

新しい商標を認めることによって、争いをおそれた企業が無難なブランディングを行うようになってしまえば競争力も生まれず本末転倒です。特許庁によって具体的指針が示されることも望まれます。

色彩や音の登録において、それらをどのように特定して行くのか、登録に際して何かしらの要件を加重するのか、そして特許庁における登録手続きにおいてどの程度厳格な審査をするのか注目されます。

昨年には、アメリカの通信事業社が、同業者に色彩の商標権を侵害されたとして裁判所の判断を求めたと大きく報道されました。

日本には、ブランディングにおいて色彩に強いこだわりのない企業が多く、色彩と結びついたブランドイメージを持っている企業はまだまだ少ないと思います。今後、色彩への関心の薄い企業と、新しい商標を積極的に取り入れていく企業との間に争いが生じたときに、日本の裁判所がどのような判断を示して行くかにも注目したいです。

改正案が成立した後、最初に色彩や音の商標を登録するのはどの企業のどんな色彩や音になるのでしょうね。

*参考:音や色の商標登録が可能に 知財法改正案が国会提出 – ITmedia ニュース

荻原邦夫
荻原 邦夫

荻原法律事務所

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