東京都内の公立図書館や書店で、「アンネの日記」や関連書籍、すなわちアンネ本が相次いで破損されるという事件が起こっています。
しかも、公立図書館では300冊以上も破損されているとのことです。
破損された本が同じアンネ本ということから、また、同時期に連続して起こっていることからすれば、同一犯人あるいは同一犯行グループの仕業を思われ、別件で逮捕された男が現在犯行を認める供述を始めているようです。
仮に、この男がこの犯行を行ったとした場合、どのような罪になり、どのような刑罰になるのか、検証してみることとしましょう。
まず、成立する罪名は、器物損壊罪ということになります。ちなみに「損壊」とは、その物の効用を喪失させることを指します。本が破損されることによって本としての効用が喪失されますので、問題なく「損壊」に当たります。
では、どのような刑罰になるでしょうか?
ちなみに、刑法261条には、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」と規定されています。
被害金額をざっと計算すると、1冊500円として300冊で15万円程度。1冊1,000円としても300冊で30万円程度。そうすると、罰金の最高額に相当する額に当たります。
この男は、この後犯行の自供をすることによってマスコミなどに大々的に取り上げられ、社会的な制裁を受けることになりますので、検察としても取り立てて懲役を求めて公判請求することもないでしょう。
そうしますと、略式裁判で、罰金30万円程度の刑罰が科されることになるのではないかと思います。
もちろん、彼の弁護人となった弁護士は、公立の図書館が相手となるため、各公共機関と示談の交渉を始めると思いますが、公共団体は基本的に裁判外での示談に応じませんので、示談により告訴が取り下げられて不起訴で釈放ということはまず考えられないかと思われます。