マレーシア機「所在不明」国際便利用で知りたい法知識

クアラルンプールから北京に向けて飛行中だったマレーシア航空機が所在不明となり、各国が懸命の捜索救助活動を実施しています。

過去には、1977年にペナン島からクアラルンプールに向けて飛行していた航空機がハイジャックされて墜落し、日本人が死亡した事故がありました。今回は、1977年の例を基に、日本人が海外旅行中に飛行機事故に遭った場合の法律関係をみてみることにします。

飛行機

■どこの国で裁判できるか

日本が加盟する航空機に関する国際条約として、モントリオール条約(2003年)があります。同条約は、基本的に出発国と到着国双方が条約加盟国である国際線の場合に適用されます。日本、欧米各国、中国、韓国など主な先進国はほとんど条約に加盟していますが、東南アジア諸国には加盟していない国も多く残ります。また、海外での国内線利用には条約の適用がありません。

条約の適用がある場合、乗客本人や親族は、居住地がある日本で裁判できます。

他方、条約の適用がない場合、日本で裁判できるのは、海外航空会社の営業所が日本にあってそこでチケットを購入した場合や、日本に居住する親族が慰謝料請求をするような場合に限られます。そうでない場合には、海外国空会社の本社がある国で裁判をする必要があり、かなりの負担を伴います。

■モントリオール条約による救済

乗客や親族の被害救済についても、モントリオール条約の適用があるか否かによって大きく異なります。

条約の適用がある場合、死亡又は傷害に係る損害は、約1,700万円まで航空会社の過失がなくても賠償されます。したがって、整備不良が原因であるか、テロ、バードストライク等問わず、原則として賠償責任が生じます。他方、1,700万円を超える部分についても、航空会社側に過失の立証責任の転換がなされており、航空会社側が無過失を立証しない限り、免責されない仕組みとなっています。

そのため、条約の適用があると、被害者側の責任追及が容易となります。

■モントリオール条約が適用されない場合

条約の適用がない場合、航空機事故という不法行為が起こった地の法律に従い、不法行為の成否、損害額の認定がされることになります。

では、どの国の領海・領空でもない公海上や南極での飛行機事故の場合には、どこの国の法律になるのでしょうか。

実は、実際によく起こりうる公海上での飛行機事故について、どこの国の法律を適用するかを定めた明確な規定はありません。裁判実務上は、不法行為と最も密接な関係を有する航空機の登録国(旗国)の法律を適用すると考えられています。

したがって、日本人が、海外旅行中に航空機事故に遭った場合、日本で裁判ができても、航空機の登録国である外国の法により、不法行為の成立と損害額が判断されてしまうことがあり得ます。

■外国人の乗客の場合

まず、裁判を提起しようとする国(母国の居住地等)の国際民事訴訟法に従って、そこでの国際裁判管轄権があるか否かが判断されます。

次いで、裁判管轄権があるとされた場合には、裁判をする国の「国際私法」(国際的な法律関係についてどの国の法を適用するか定めた国内法)により、航空機事故についてどの国の法律を適用するかを決定し、最後に、不法行為の成立と損害額を認定することになります。

つまり、モントリオール条約の適用がない場合には、同じ場所で起こった同じ航空機事故であっても、乗客の国籍や居住地によって、裁判できる国も異なれば、実際に不法行為について適用される法律も異なることになります。

その結果、どのような被害救済が認められるかも、乗客それぞれ別々になる可能性があります。

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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