多摩市の59歳男性職員が、勤務中にも関わらず定期的にパソコンをしていたということで減給処分を受けたそうです。
当該の職員は課長だそうで、その立場を考慮して多摩市の条例で定める減給処分の中では最も重いものになったとのことです。
公務員の懲戒処分の種類には、重い順に、免職>降任>停職>減給>戒告があります。ちなみに、今回発動された「減給」処分は、国家公務員の場合は人事院規則で、1年以下の期間、俸給の5分の1以下を減額する規定になっています。
裁判所が口うるさく介入してくるのは、免職の場合だけです。つまり、免職により職を解かれ、生活が脅かされることになりますので、免職は最終手段にすべきであり、人事権の裁量権に口を挟んでくるのです。
逆に言いますと、それ以外の懲戒処分については、裁判所は殆ど口を挟んできません。人事権の裁量をほぼ完全に認めます。
■減給はまだまだ軽いほう?
本件では、減給というのは、軽い方から2番目であること、戒告で済ますには「課長」という身分では他の職員に示しがつかないこと、課のトップが仕事中にパソコンゲームをすることで他の職員への労働意欲に及ぼした悪影響等から考えて、妥当な判断であろうと思います。
実際の処分も6ヶ月間、給料の10%をカットするというものですから、先の人事院規則の範囲内(期間も減額も規定の半分)ですので、もし裁判になったとしても妥当な処分との判決がでるものと思われます。
基本的に、裁判所は懲戒処分を行う場合の原則として、軽い方から順序を踏め、と言います。
これがもし平の職員であれば、おそらく戒告処分が妥当だったのだろうと思いますが、だからといってこの平社員が懲戒処分の不当性を裁判所に訴えたとしても、裁量権の逸脱を認めるような判断にはならないだろうと思います。
■抽象的な就業規則はトラブルのもと
懲戒事由については、公務員だろうと、民間だろうと就業規則の中に具体的に書かれています。
自らの身を守るためには、懲戒事由について熟知し、もしその表現が抽象的で何でも解釈で落とし込めてしまいそうなものについては、常に上司に確認を取るなど、不当な懲戒権の行使がされないようにしていくしかないと思います。
トラブルになるのは、労使ともにこのような抽象的な規定を巡ってです。
具体的なケースにおいて懲戒事由にあたるか疑問を生じたときには、雇用主は必ず顧問弁護士に相談をして、被雇用者は身近な相談に乗ってくれる弁護士に相談をして、過去の判例に照らして懲戒事由にあたるかどうかの法的な見解を聞く努力をすることを強く勧めます。