明日ママやガキ使で「心傷」法に訴えることは可能か?

表現が問題になっているテレビドラマ「明日、ママがいない」を見て女子児童が自傷行為をし、病院で手当てを受けるといった事態が発生したそうです。

また年末特番「ガキの使いやあらへんで」では芸人を使った罰ゲームに放送基準との乖離が見られるなどの意見が放送倫理・番組向上機構の委員から出たそうです。

前者が事実だとすれば間接的ではあるにせよ実害といえ、非常に問題です。また後者も映像を見て同様の罰ゲームを実践し怪我をしたり心に傷を負ったりしたりした場合は同様に問題と言えるでしょう。

このようなケースで、テレビ放送が原因で「心傷」を負ったり「怪我などの実害」が生じたりした場合、その被害者はテレビを相手取って法的手段に訴えることができるのでしょうか?検証してみたいと思います。

テレビ

■テレビ局を相手取って法廷手段に訴えることができるか?

放送の内容規制とも言うべき法律というのは、実は一つだけありまして、それが放送法です。その第4条には、国内放送等の放送番組の編集等について、以下のような規定があります.

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一:公安及び善良な風俗を害しないこと。

本件の場合は、いずれも第1号の「善良な風俗」を害するのではないか、ということで問題になりえます。ただ、放送法というのは罰則がありませんし、この条項に違反したからと行って直ちに法的な効力が発生する訳ではありません。

これは国が放送の内容をコントロールする恐れにも繋がる話で、憲法で認められた表現の自由の制約になりかねないからです。

だからといって、放送の内容が、ある特定の個人を誹謗中傷したとか、ある特定の集団を差別したとか、ある犯罪を煽動したとか、そういう場合には放送法以外の個別の法律によって法的措置を講じることはできます。

■本件ではどうでしょうか?

まず、「明日ママ」の場合ですが、この番組を見て女子児童が自傷行為を行ったとのことですが、確かにドラマにおける台詞の中には酷いものが多いようで、視聴者や各種団体からも抗議が相次いでいるようですし、放送人権委員会にも審議を求める申し立てがされているとのこと。

このような抗議の中で、今後今回の事件のような自傷行為を行う子どもたちが出てこないとも限らないとの警告を受けていたにもかかわらず、放送を続けていたというような事情があれば大きな問題と言えましょう。

また、「ガキの使い」での罰ゲーム等は、まさに学校におけるいじめの格好のモデルになるかのような内容であり、案の定学校でのいじめに影響を与えたということで抗議を受けているのだと容易に想像がつきます。やはり大きな問題と言わざるを得ないでしょう。

■法的措置を取りうるかどうかについての問題点

これは、テレビ局が特定の人、団体に対してこのような違法行為をしたかどうか、によります。

例えば、明日ママをみて、ある園の子どもたちが自傷行為をしかねないと不安を感じた保護者がわりの園長先生が、放送差し止めの仮処分を起こしていたとか、いじめを受けやすい子どもを持つ親が、「ガキの使い」をみて、明日は我が子の身と思い、放送止し止めの仮処分を起こしていたというような場合であれば、違法行為の相手方も特定できるのですが、もしそのような状況がないとするならば、正直なところ、裁判を起こしたとしても負けてしまう場合が殆どでしょう。

NHKでも、民間放送でも、公共の電波にのってあまねく全国民の視聴にさらされるわけですから、ただ漠然と我々も見ているだけでなく、放送の内容に対しては監視の目を光らせながら、いい番組作りをしていってもらえるよう、声を上げなければなりませんね。

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小野智彦
小野 智彦 おのともひこ

銀座ウィザード法律事務所

東京都中央区銀座1-15-13VORT銀座604

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