消費者問題に関する事例や対処方法を紹介している国民生活センターに、「婚活サイトなどで知り合った相手から勧誘される投資用マンション販売に注意!!-ハンコを押す相手は信ジラレマスカ?-」という衝撃的なタイトルの記事が掲載されました。
いわゆる婚活サイトなどを通じて知り合った異性に投資用マンションなどを市場価格よりも高値で購入させ、その利ざやで儲けるといった悪事が多数報告されているということです。
従来のデート商法よりも被害金額が高額、また精神的苦痛も大きいことから、国民生活センターでは被害の拡大防止を目的に情報提供しています。
資料から具体的な事例を2つ抜粋し、被害に気づいた場合に法律をどのように活用すればよいかという視点で解説していきます。
■相手の知り合いと契約結ぶ
「婚活サイトで知り合った男性とデートを繰り返し「税金対策・年金代わり・個人的に面倒をみると言われて契約、その後音信不通に(独立行政法人国民生活センターの平成26年1月23日付け報道発表資料の【事例2】)」について。
このケースにおいて、被害女性は、男性からホテルに呼び出され、男性の知り合いの人と契約をしているようです。
本件に関連して、宅地建物取引業法37条の2は、「宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という)以外の場所において、当該宅地建物又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除を行うことができる。」と規定しています。
いわゆるクーリング・オフの規定です。
ホテルは、この規定の「事務所等以外の場所」に当たります。クーリング・オフの場合、宅地建物取引業者は買主に対して、損害賠償や違約金を請求することができません。
そこで、被害女性としては、まずクーリング・オフを検討するのが良いでしょう。クーリング・オフは、理由も不要なので一番簡単です。
ただし、このクーリング・オフは、クーリング・オフに関する書面交付と説明を受けてから8日間が経過した後や、マンションの引渡しをうけて代金全額を支払った場合はすることができないので注意が必要です。
次は、まさにこのクーリング・オフができないケースです。
■よく分からないままマンション契約
「旅行の約束までした男性から勧められ、よく分からないままマンション契約。解約を迷っている間にクーリング・オフ期間を超過、男性とは疎遠に(同報道発表資料の【事例3】)」という事例です。
このケースにおいて、被害女性は、知り合いに相談してクーリング・オフを勧められていましたが、キャンセルに解約料が必要だと思っていたことと男性に対する恋愛感情から期間内のクーリング・オフができなかったということです。
この場合、以下のような主張ができないか、検討する必要があります。
・重要事項について事実と異なることを告げられ誤認したことを理由とする取消(消費者契約法4条1項1号)
例えば、不動産販売会社(あるいは不動産販売会社から委託を受けた男性)から、マンションの市場価値について3,000万円と告げられ、そのように誤認したところ、1,000万円位の価値しかないような場合です。
男性が結婚の意思を有していると誤認したことは、契約の動機にすぎず、通常「重要事項」に当たらないと考えられます。
・重要事項について将来の不確実なことについて断定的判断を提供され確実であると誤認したことを理由とする取消(同法同項2号)
例えば、不動産販売会社(あるいは不動産販売会社から委託を受けた男性)から、「マンションは今一番安値で、これから値上がりするはずです」と告げられ、そのように誤認した場合です。
・重要事項について不利益となる事実を告げられなかったことにより、不利益事実が存在しないと誤認したことを理由とする取消(同法2項)
・詐欺を理由とする取消(民法96条1項)
・錯誤無効の主張(民法95条)
マンションを買ってしまった人は、これらのケースに当たるかどうか、弁護士とよくご相談ください。
男性に勧められて投資用 マンションを買うかどうか迷っている人は、仮に男性の結婚の意思が偽りであった場合を想定して、それでも買う価値のある物件かどうか、よく調べてご検討ください。
投資において、他人の判断を鵜呑みにするのはトラブルの元です。
*参考:婚活サイトなどで知り合った相手から勧誘される投資用マンション販売に注意!!-ハンコを押す相手は信ジラレマスカ?-