女湯「盗撮の恐れ」チェックしたい法的ポイント3つ

先日、老舗温泉旅館の女湯が廊下から丸見えになっており、盗撮の恐れがあったとして、入浴していた女性客が温泉旅館を民事で訴えるという事件のニュースがありました。

女性客は、入浴姿をさらされ多大な精神的苦痛を受けたと主張しています。

裁判では、入浴客の権利または法律上保護される利益を侵害したといえるか、温泉旅館に盗撮を防止すべき義務があったかなかったのか、義務があったとして違反したかどうか、精神的損害が発生したといえるか、義務違反と精神的損害との間に因果関係が認められるかどうか等が問題になってくるのではと思います。

これらのうち3つのポイントについて検討してみたいと思います。

女湯問題

■入浴客の権利または法律上保護される利益を侵害したといえるかについて

この点、入浴客には、個人の私生活上の自由として、その承諾なしにみだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されないという人格的利益としての肖像権があります。

したがって、入浴客が盗撮されたような場合、肖像権が侵害されたということはできそうです。しかし本件の場合、盗撮の恐れがあったというだけですので、肖像権が侵害されたとまではいえません。

本件の場合、入浴客は胃痛、不眠と不安抑鬱状態を訴えています。そこで、入浴客の身体が侵害されたということはできるかもしれません。

しかし、盗撮防止の措置を採っていなかったことによって入浴客の身体が侵害されたといえるかという因果関係の問題が残ります。

具体的には、盗撮防止の措置が不十分であったことによって、女湯のガラス窓の外に掛けてあったすだれが何者かに外されていたという状況において、入浴客の胃痛、不眠、不安抑鬱状態による精神的損害を旅館に賠償させるのが相当かどうかといったことが問題になってきます。

これは、価値判断も入ってくると思いますので難しい問題です。

■温泉旅館に盗撮を防止すべき義務があるかないかについて

この点、地方公共団体の条例や厚生労働省の通達が,旅館の共同浴室について,男女別に分けるようにとか、浴室の外部から容易に見えない構造にするようにとか定めていたりしますが、盗撮を防止すべき義務を明確に定めた法令は確認できません。

したがって、道義的にはともかく、法律的には温泉旅館に盗撮を防止すべき義務を認められるかどうかは微妙だと考えます。

■のぞいたり盗撮したりできるような状況を放置した場合について

もっとも、のぞきは犯罪(軽犯罪法1条23号)です。

旅館の者も、わざとのぞき窓を設けたり、丸見えになっていることを知っていて誰がのぞいてもかまわないと思って放置していた場合にはのぞきを幇助した者として責任を負うことになります(軽犯罪法3条)。

以上、色々述べましたが、温泉旅館も客商売です。

義務があろうがなかろうが、お客さんから指摘があった場合はもちろん、お客さんから指摘がなくても、お客さんが不快に感じる恐れがある事に気付いた場合には放置せず改善していくべきでしょう。

また、お客さんからクレームがあった場合には、事実を確認した上で、不手際があればすぐに謝罪するべきと考えます。

もっとも、不当に高額な賠償請求や不当な要求(土下座の強制等)に対しては応じるべきではありません。裁判にしてもらった方がいい場合もあります。

ご自身で対応が難しいと思われた場合、弁護士に相談されてもいいでしょう。

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

東京都千代田区霞が関3‐3‐1 尚友会館4階

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