Apple審査をくぐり抜けた「海賊版アプリ」は違法?

「ピザーラ」や「マツモトキヨシ」など大手店舗の名を冠した海賊版iPhoneアプリが、厳しいと言われるAppleの審査をくぐり抜け公開されていることが話題になっています。

1月21日現在App Storeで「マツモトキヨシ」と検索して一番最初に表示されるアプリのレビュー欄には、株式会社マツモトキヨシという名前で「偽アプリの為ダウロードにご注意ください」という書き込みが見られます。

アプリを経由してマツモトキヨシのショッピングサイトに接続できるようなのですがその際に入力した個人情報などはどうなるのか、考えただけでも恐ろしいです。このような海賊版アプリを製造した側には法律的にどのような問題があるのか見ていきます。

海賊版アプリ

アプリは公式サイトに接続されるようになっているので、その点だけを見ると問題があると言うことは難しいと思います。アプリを使用したわけではないので確定的なことはいえませんが、これが公式サイトのソースコードを無断で使っているということであれば著作権侵害となるでしょうが、単に公式サイトに接続されるだけでありソースコードを無断使用しているということではないと思われるためです。

■商標権侵害の可能性は?

しかし、アプリは大手店舗のロゴを使用しています。

ロゴは商標として登録されていることが多く、実際にピザーラもマツモトキヨシも商標登録されています。登録された商標について、同一または類似のサービスに無断で利用した場合には、商標権侵害となります。

海賊版アプリに関しては、自身が商標を使うことができるわけでもないにもかかわらず、大手店舗のサービスであると誤認させるような体裁となっているため、商標権侵害があると言い得るのではないかと思います。商標権侵害がある場合、被侵害者はその差止めを求めることができるほか、損害賠償を求めることができます。また、罰則もあります。

■本家ブランドとの混乱を招く

また、大手店舗の商号と同一ないし類似したロゴを用いている点で、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為として不正競争防止法違反ともなり得ます。

これについても、損害賠償のほか、「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」が科される可能性があります。

■その他の罰則は?

ところで、アプリを登録(インストール)すると、いわゆる「個人情報が抜かれる」ことがあります。これについては何か罰則があるのでしょうか。

アプリのインストール画面においては、どのような個人情報を取得するのかという確認画面が出るはずであり、それに同意したことがインストールの条件になっているのが通常です。そのため、個人情報の提供に同意しているということから、これを違法であると言い切ることは難しいという事情があります。

ただ、アプリの説明にあるような機能が全くなく、電話帳データなどを抜き取るなどの動作を引き起こすようなものは、コンピュータウイルスと同じであるとして、不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪)に抵触する可能性があります。

このように、海賊版アプリなどの不正なアプリについても法律が一定程度の規制をしていますが、法律の規制というのは基本的には事後的な適用ができるだけですので、被害に遭ってしまった場合に、それを完全に回復することは困難です。

そのため、自衛のためにも安易なアプリのインストールには十分に気をつけていただければと思います。

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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