企業が個人情報を流出するという不祥事を起こすと、大きく報道されることの多い昨今ですが、つい先日も佐川急便が近畿大学に在籍する学生約100名の「名簿」を紛失したとして各種メディアで報じられました。
現在のところ直接の被害は発生していないようなのですが、紛失した名簿には学生の氏名や住所、電話番号などが記載されていたため、悪用される危険性は非常に高く、紛失した佐川急便側の責任は重大であると考えられます。
ただ、自分の個人情報は流出してしまったものの、実際に被害がない場合、流出させた側に損害賠償は請求できるものなのでしょうか。また、もし実際に被害があった場合にもどの程度の損害賠償を請求できるのでしょうか。今回の記事ではこれらの疑問点について民事法務に詳しいピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお話を伺いました。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
■名簿紛失した学生は佐川急便に損害賠償請求は可能?
まず、今回の事案について、学生は佐川急便に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか?
「個人情報漏洩のケースでは、これまでの判例からみますと、実際に実害が生じない場合でも流出自体の慰謝料として一人当たり3万円程度が最高額で認められる場合はあります。実際に「個人情報を悪用された」場合については、その悪用によってどの程度損害が生じたかによって責任を追及できる限度は異なってくるでしょう。」(森川弁護士)
実際の被害がない場合、請求できる金額はそこまで大きくないのですね。また、仮に損害があったとしても、どの位の損害賠償が行われるかは被害の大小によってケースバイケースになるようです。
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