IT化の進んだ日本社会。今やシステムなくして、仕事が成り立たない時代になりました。コンピューターシステムが成熟するに連れて、開発会社の競争も激化。各会社の営業マンが「売り込み合戦」を繰り広げ、あの手この手で受注を得ようとしています。
いい加減な営業に騙され…
そんなシステム営業マンですが、なかにはいい加減な人物も。到底技術力が追いつかない案件にも関わらず「やります!」と嘘八百を並べ、納品してみると全く動作しない、あるいは顧客が求めるものとかけ離れている場合があります。
ある会社のシステムを統括するHさん(50代・男性)もその被害者。システム選定の際、I社のUという営業マンに要望を出したところ「うちはパッケージソフトではないので、カスタマイズできます。技術力に自信があります」といわれ導入を決めたのですが、蓋を開けてみるとめちゃくちゃ。
要望通り動かず、トラブル連発でまともに動作しないどころか、「こうしてくれ」とカスタマイズを頼んでも「それはできない」との回答。HさんはUさんに「詐欺だ」と怒鳴りつけましたが、「できないカスタマイズもある」と開き直られ、憤りを感じています。
「それならばお金は払わない」と考えているHさん。一方営業のUは、「何があっても納品した以上は支払ってもらわねば困る」と息巻いています。実際のところどうなのか、法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問してみました。
支払わないことは可能?
冨本弁護士:「システム会社の方が、システムの不具合に対応しないか、対応できないような場合であれば、発注者の方で契約を解除することによって可能です。システム会社は、契約を締結したことによって、システムを完成させる義務を負っています。
他方で、発注者は、契約を締結したことによって、それに対する報酬を支払う義務を負っています。したがって、発注者は、このままでは報酬を支払う必要があります。しかし、アプリケーションやシステムが動かないままでは、システムの完成とはいえません。
そこで、発注者としては、システム会社に対して、システムの不具合に対応するよう求めることができ、それでもシステム会社が何ら対応しないか、対応できないような場合、契約を解除して報酬の支払い義務を免れることができます」
契約を解除すれば支払い義務を免れる
HさんがI社とUに対し不具合の修正を求め、それでも満足できるものにならない場合は、契約を解除すれば支払い義務を免れることができるようです。そうなれば当然、UとI社は多大な損失を被ることになるでしょう。
競争過多の時代だからといって、できないことをできると言ってしまえば、取り返しのつかない事態になってしまうということ。いずれにしても、システムの改修には人力と日数がかかります。いい加減な営業をしたUは、相応の責任を取らねばなりませんね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)