労働基準法で使用者は一定時間勤務した従業員に対し、休憩時間を設けるよう定められています。
働いた事がある人なら誰もが知るルールですが、守られているかというと、そうではないケースもあるようです。
休憩にまつわる「ルール」に憤るKさん
コンビニエンスストアでアルバイトをしているKさん(20代・男性)は、店の休憩時間にまつわる「あるルール」に憤りを覚えています。
それは店員が休憩中であっても、レジに人が列を作っている場合は、仕事をしなければならないというもの。
「お客様を待たせない」ためだと言いますが、忙しい時間帯などはひっきりなしに人が来ることもあり、休めないそう。
さらに「その分休ませてほしい」と話しても、オーナーサイドから拒否されており、事実上休憩なしで働いていると言っても過言ではないKさん。
このような措置は違法ではないのでしょうか?琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。
許されるのか?
川浪弁護士:「休憩時間については、労働基準法第34条1項が「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」と定めています。
この規定に違反した場合、使用者は「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処される可能性があります(労働基準法第119条)。
上記の定めに鑑みると、1日の労働時間が6時間未満であるならば、休憩時間を与えなくても合法ということになりますが、1日の労働時間が6時間以上8時間未満の場合には最低45分、残業などで労働時間が8時間を超える場合には最低1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。
なお、上記の定めに従って休憩時間を付与する限りは合法ですので、使用者は、業務上の都合で当初の予定どおりに休憩時間を付与することができなかったとしても、上記の時間を満たすように調整してその後に改めて休憩時間を付与すれば問題ないということになります」
使用者に請求することが可能に
川浪弁護士:「したがって、設例の事案では、1日の労働時間が6時間未満ならば休憩を与えなくても法的には問題ないということになります。
ただし、この場合、労働者は、当初予定されていた休憩時間に働いた分の賃金を別途、使用者に請求することができます。
他方で、1日の労働時間が6時間以上であるにもかかわらず、法で定められた45分又は1時間の休憩時間を与えられない場合には、労働者は休憩時間に働いた分についての賃金を使用者に請求できることはもちろん、労働基準監督署に通報することで、解決策を教授してもらったり、(悪質と判断された場合には)使用者に対して調査・是正勧告をしてもらう余地があります」
証拠を集めて相談へ
川浪弁護士:「もっとも、「休憩時間に働いた」、「労働基準法が定める休憩時間を与えられなかった」という事実についての証拠がなければ、賃金を請求しても払われない可能性、労働基準監督署に相談しても真摯に取り合ってもらえない可能性があります。
したがって、証拠の確保が何よりも重要になるでしょう。この点に関して、タイムカードで休憩時間まで管理されている場合(打刻が必要な場合)には、そのタイムカードに正確な休憩時間を打刻し、その写真を撮影しておく等の方法で証拠を確保できます。
他方で、タイムカードなどで休憩時間の管理が行われていない場合には
①手帳などにメモを残しておく
②使用者にメールやLINE等の証拠に残る方法で休憩時間に●時間(●分)働いた旨を通知し、証拠に残しておく、
③(使用者のLINEアカウントやメールアドレスを知らない場合には)家族や職場の同僚に対して、休憩時間に●時間(●分)働いた旨をメールやLINEで通知し、証拠に残しておく、といった方法が考えられます。
なお、労働基準監督署に相談しても改善されない場合には、弁護士に相談するという方法も考えられるところです。
ただし、未払いとなっている休憩時間分の賃金が多くない場合には、未払いの賃金よりも弁護士の相談料・依頼料の方が高いという事態があり得ますので、弁護士への相談については慎重に判断した方がよいでしょう」
納得がいかない場合は行動を
Kさんのケースは、やはり違法となる可能性が高いようです。
費用やリスクなどを考えると実際に行動を起こすことは難しいかもしれませんが、納得がいかない場合は証拠を集めた上で労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)