最近、交際関係を解消した後に相手方から今まで使ったお金や物を返して欲しいと言われたがどうしたらよいかというご相談をいくつかいただきました。
現金を直接渡しているケースもありますが、そうでない場合でも、例えば、デート代や旅行代金、プレゼントの相当額などを返せという請求を受けたという内容です。
中には過去数年にわたるデート代を詳細に記録しており、1円単位まで請求をしてくる相手方もおります。
結論から申し上げると、原則、お金を返す必要はありません。
法的に言えば、贈与契約に該当すると考えられるところ、もらったものは返す必要がないというのが基本的な考えになるからです。
ただ、中には贈与契約に該当する場合でも、何とか理屈を作りこんでお金の回収をしようと考える相手方もいます。
時々目にするのが、解除条件付の贈与であったという主張です。
どんな主張かと言うと、とある約束(条件)を守ってくれるのであればあげるけど、その約束を守ってくれないのであればあげないよ、という主張です。
たしかに法的にはあり得ない主張ではありませんが、交際関係にあった間柄で、何らかの条件をつけて贈与をするというのは不自然としか言いようがありませんよね。
また、詐欺に該当するからお金を返して欲しいという主張をしてくる相手方もおりますが、詐欺であることは相手方が具体的な内容を特定し、それを証明することができなければならないところ、交際関係のあった間柄で、明確に「詐欺」を証明できるケースはほとんどないのではないかと思います。
以上のとおり、あげたものを取り戻すというのは簡単ではない訳です。
昔は、いわゆる夜のお店で相手方に貢ぐなどしたお金を取り戻したい、または逆に、貢がれたお金を返して欲しいと言われたといった相談を受けることはありました。
キャストとお客さんが本当の恋愛関係になることも0ではないのでしょうが、疑似恋愛の中で入れ込んでお金を払ったお客さんが、目が覚めた時に取り戻したくなり相談に来る…そういったケースは珍しくありませんでした。
ですが、最近は普通の交際関係にあった当事者でのご相談が増えております。
中には、理屈上取り戻すことができないということを知りながら、朝から晩まで電話やメール攻撃をしたり、時には手を上げたりするなど、恐喝に該当するような事案もございます。
法的理屈を説明しても、相手方が「なるほど」と諦めてくれるケースは少ないように思えます。
その場合には、弁護士を代理人に立てて、相手方をブロックしつつ、法的観点からの説明を行い、必要に応じて警察への対応を要請するというやりか方必要になることもあります。
お困りの際にはお金を渡す前に、お気軽にご相談ください。
*執筆弁護士:若井 亮(若井綜合法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)
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