新婚のAさん(20代・女性)は早くも離婚の危機を迎えています。その理由は、結婚式。泥酔した共通の友人が、Aさんの過去の恋愛遍歴を暴露してしまったことで、険悪になってしまいました。
その内容は酷いもので、「新郎の親友と付き合っていた」「両方にいい顔をして乗り換えた」など散々だったそうです。
Aさんの夫が激怒し離婚を…
Aさんは非常に不愉快な気分でしたが、新郎の友人と交際しており、それを黙っていたことは事実のため、「丸くなるしかない」状況。新郎に「あくまでも過去の話」と理解を求めましたが、「知らなかった」「親友から乗り換えたなんて許せない」と激怒し、離婚をほのめかしているようです。
関係を継続するよう説得しているAさんですが、離婚となった場合は不要な暴露話をした友人に慰謝料請求などを検討しています。しかし当人にその話をすると「酔っていて覚えてない」の一点張り。証拠の動画などもなく、「責任を問えないのか…」と絶望的な気分になっているそうです。
夫婦仲が悪くなるような話を流布し関係を壊した場合、張本人に責任を問うことは可能なのでしょうか? 高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
友人に損害賠償を請求することは可能?
理崎弁護士:「新郎あるいは新婦から、新婦の友人に対する損害賠償請求が認められるためには、新婦の友人に「不法行為」(民法709条)が成立する必要があります。
具体的には、新婦の友人の故意あるいは過失に基づく行為によって、新郎新婦を離婚に至らせた、と言えることが必要です。新婦の友人がどのような趣旨でスピーチしたのかは分かりませんが、自分のスピーチによって新郎新婦を離婚に至らせよう、という意思まではなかったと思います。
そのため、仮に、上記スピーチが原因で新郎と新婦が離婚した場合であっても、新郎と新婦を離婚に至らせようという積極的な意思が新婦の友人になかったような場合には、新婦の友人には不法行為は成立しないので、新郎あるいは新婦は、新婦の友人に対して損害賠償請求をすることはできないと考えます。
婚約前や結婚前であれば誰と交際しても自由なので、過去に新婦が新郎の友人と付き合っていたということは離婚事由には該当しません。かかる点からも、新婦と新婦が離婚したことは新婦の友人の行為とは無関係(因果関係がない)と判断され、いずれにせよ、新婦の友人には不法行為は成立しないと考えます」
不法行為には当たらないが…
悪意を持って離婚に至らしめようという意志なく発せられた言葉の場合、不法行為には当たらないため、損害賠償を請求することは難しいようです。ただし道義的に見れば、酔っていたとはいえ新婦の過去に言及することは、良いことではなく、謝罪などをする必要があることは間違いないでしょう。
Aさんの説得が夫に通じることを祈りたいものです。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)