夫の不倫は妻にとって許せるものではありません。なかには、思いもよらない過激な復讐を行う妻もいます。
例えば…
実際に賞味期限切れのイカを食べた夫は、会社を早退し病院に駆け込んだそうです。また、夫の使うタオルを少量の洗剤で、足ふきマットと一緒に洗ったり、夫の使うお皿は水でさっと流したりしただけ、なんて復讐話もあります。
ネットで見る分には、ある種、笑い話しともいえますが、友人や身近な人がこんなことをしていたら、正直筆者はドン引きします。
このような夫は何も知らないまま、不衛生な環境で生活していることになります。いつ病気になってもおかしくないですよね。
妻がこのような行為をした場合、夫の不倫が原因であっても、夫からの離婚請求は認められるのでしょうか? このような復讐が行われていた夫婦の離婚について、【虎ノ門法律経済事務所の齋藤弁護士】に聞いてみました。
Q1:夫の不倫が原因とはいえ、故意に不衛生な環境で夫を生活させることは違法ですか?
齋藤弁護士
違法行為になり得ます。
不衛生な環境を積極的に作り出す行為そのものは、「夫婦だから」といって許されるものではありませんよね。
これが継続的であれば、場合によっては、不法行為(故意に他人の権利や利益を違法に侵害する行為)が成立する余地はあるといえるでしょう。
これが進行していくと、民法770条1項5号(婚姻を継続し難い重大な事由があるとき)における離婚原因にもなりえます。
故意にそうした環境を作った場合に限らず、あまりに度が過ぎるのであれば、傷害罪になる可能性があります。ただし、実際に傷害罪として、捜査や起訴に至るとは考えにくいところではあります。
Q2:このような妻の行為は、夫の不倫を理由に妻が慰謝料請求した場合、減額などの影響が出ますか?
齋藤弁護士
不倫とは不法行為の質、態様が違います。ただし、場合によっては相殺の対象となる可能性があります。とはいえ、そのような行為を証拠に、夫婦関係が破綻していると主張(抗弁)し、慰謝料請求に対する反論の一要素に使うことはできるでしょうね。
Q3:妻のこのような行為に関する証拠を集めるとしたら、どのようなものが有効ですか?
齋藤弁護士
夫婦関係破綻の抗弁は、慰謝料請求に対する一種の反論ですから、生活の実態を浮き彫りにしていく必要があります。その意味で、日記をつけたり、けんかなどに至った場合には会話内容を録音したり、LINEのやり取りを残したり、日々の痕跡が重要になってきます。
ただ、これらは軽微なものだと思って、捨ててしまう人が多いです。
Q4:妻のこのような行為を理由に、不倫した夫は離婚を切り出せますか?
齋藤弁護士
ありえるでしょうね。夫婦関係は破綻していると認識できます。もちろん、夫の歯ブラシでの排水溝掃除や賞味期限のイカだけが決定的な理由になることは難しいでしょう。
そうではなくて、イカの例が象徴するように、そのほかにも夫婦の破綻に関するエピソードなど一つひとつの積み重ねが、離婚理由になると考えられます。
弁護士は、それを一つひとつ丹念にヒアリングしています。
まとめ
根本的な原因が夫の不倫であっても、感情に任せて復讐をしてしまうと、夫婦関係の修復が不可能になるだけではなく、離婚を決意した場合、妻が損をすることになります。
そもそも、民法の概念として『自力救済の禁止』というものがあります。これは、権利侵害の被害に遭った人が、司法手続きを取らずに自己の力(物理に限らない)で権利を回収することを禁止する概念です。
要するに、『不倫』という権利侵害を受けたからといって、復讐することは根本的に禁止されているのです。不倫をされた場合は、損をしないためにも民法に則り、慰謝料を請求しましょう。
*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*執筆・取材:アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと日々奮闘中。執筆いただける弁護士先生募集中です。)