みなさんご存知、マンガもアニメも大人気、『名探偵コナン』(小学館)の主人公、江戸川コナン。
彼はとても優秀で、車にボート、ヘリ、飛行機などの運転ができてしまいます。ハワイで父親に習っただけで運転できてしまうなんて末恐ろしいですよね。
しかし、ここで一つ気になることがあります。車はもちろんですが、船や飛行機を運転するには免許が必要なはず。緊急事態とはいえ免許を持っていないコナン君が運転したら罰せられないのでしょうか?
今回は、車や飛行機などを無免許運転した場合、どのような罰則があるのか紹介したいと思います。
各免許を取得できる年齢は?
無免許運転についての罰則を説明する前に、各免許の取得年齢を説明したいと思います。取得年齢の要件は、最低限、自動車の運転をするには一定の判断能力が必要だと理解されています。
コナン君は元々高校2年生で年齢は17歳ですので、免許を取得できる年齢が17歳以下であれば合法の可能性もあるので、一つずつ確認していきましょう。
自動車
コナン君が運転を習ったハワイ州では、車の免許取得年齢は16歳以上です。ということは、コナン君は免許を持っている可能性があります。16歳にもなれば、運転に必要となる判断能力や知覚能力は発達していると考えることはできますよね。しかし、それはハワイの場合。
コナン君がハワイで免許を持っていたとしても日本で運転することはできません。日本で運転免許が取得できるのは18歳になってから。そして、海外で取得した免許を日本の免許に切り替えることができる年齢も18歳以上となっています。もちろん、コナン君は日本人ですから、当然日本の法律が適用されることになるのです。
そのため、もしハワイで免許を取得していても日本で運転することはできません。
ボート
ボートを運転するには小型船舶操縦士免許が必要です。小型船舶操縦士免許には、1級、2級、特殊小型などがあります。1級免許を取得できる年齢は18歳以上ですが、2級と特殊小型は16歳以上であれば取得可能です。
1級と2級の違いは運転できるボートの大きさと航行区域が異なり、これは、運転すべき技能の能力にかかわる問題ですので、明確な区別が必要となるのです。
【2級小型船舶操縦士免許を所持していた場合】
ボートの大きさ | 航行区域 |
総トン数20トン未満プレジャーボートは24m未満 | 平水区域および海岸より5海里(約9キロメートル)以内 |
つまり、コナン君が2級小型船舶操縦士免許を持っていた場合、運転した場所とボートが上記の表内までなら問題ないということになります。実際には、遠出をしないのであれば2級で足りることが多いでしょう。
また、コナン君は水上バイクにも乗ったことがあります。運転には特殊小型船舶操縦士免許が必要で、こちらも16歳で取得できるのでコナン君は持っていたのかもしれませんね。
ヘリ・飛行機
ヘリと飛行機を運転する場合には、まず、資格の取得が必要となります。資格の内容としては、以下の3種類があります。
・自家用操縦士資格
・事業用操縦士資格
・定期運送用操縦士資格
ヘリと飛行機それぞれに上記3つの資格があり、自家用操縦士資格は航空機を飛ばしたことの対価として報酬を得ずに趣味などで運転する場合に必要となります。
事業用操縦士資格は業務としてヘリや飛行機を運転する場合に、定期運送用操縦士資格はジャンボジェットなど構造上2人以上での運転が求められるものを操縦する際に必要となる資格です。
操縦士資格を取得するためには国家試験を受験しなくてはなりません。自家用操縦士資格の場合、17歳以上で総飛行時間40時間以上などの飛行経歴があれば受験することができます。
この記事は、コナン君の話題でした。飛行訓練は16歳から始めることができるので、コナン君が自家用操縦士資格を取得していた可能性はゼロではありませんね。(コナン君、自家用以上のものを操縦している気がしなくもありませんが…)
そのため、ヘリの運転は合法であった可能性があります。しかし、コナン君が運転したのはジャンボジェットであり、定期運送用操縦士資格が必要です。定期運送用操縦士資格は21才以上でないと取得できないため、明確に違法の可能性があるでしょう。
各乗り物を無免許運転した場合の罰則
コナン君が運転したさまざまな乗り物ですが、無免許であった場合どのような罰則を受けるのでしょうか?
車
車を無免許運転した場合、道路交通法違反にあたり『3年以下の懲役または50万円以下の罰金』に処されます。
ボート
ボートの無免許運転の場合、運転した者だけでなくボートの所有者にも罰則があります。無免許運転した者には『30万円以下の罰金』、所有者は『6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金』に処されます。
ヘリ・飛行機
ヘリや飛行機の無免許運転にもちゃんと罰則が存在しており、航空法149条で定められています。
操縦士の資格を持っていないのに飛行機やヘリを操縦した場合は1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。
上記のような無免許運転に対する罰則がそれぞれ定められているわけですが、コナン君はあくまで緊急事態であったから運転したわけです。これをもって刑罰法規を発動するかどうかはもちろん問題となり、刑法上緊急避難として違法性を認められない可能性があります。
実際、緊急事態において無免許で車などを運転するのは法律違反なのか、虎ノ門法律経済事務所 齋藤健博先生にお伺いしました。
Q:「警察などの捜査機関が犯人追跡のために無免許で水上バイクやボートなどを運転した場合は違法ですか?」
A:「これは正当業務行為の範囲内といえるかどうかは、どのような運転をしたか次第ですね。たとえば、犯人を追跡するための手段だとしてもあまりにもひどい走行をすれば、当然緊急避難の範囲を逸脱します。しかし、多少動かした程度では緊急避難が成立する余地もなくはありません。しかし、場合によっては捜査行為が比例原則に反するとして、違法になりえます。」
Q:「ヘリや飛行機の操縦士が突然操縦不能になったために操縦した場合は違法でしょうか?」
A:「これは緊急避難の範囲を逸脱しえますが、だからといってそのまま墜落するのか、という話もあります。トロリー問題として、講学上も議論の対象になっています。一件一件の事案をみないと判断できないということですね。たとえば、操縦不能はどんな原因によって引き起こされたものなのかも問題になりましょう。テロリストなのか、故障によるものなのか…などですね。」
Q:「身の危険を感じる状況(ナイフを持った変質者に追われているなど)で逃走のために無免許で車を運転した場合は違法でしょうか?」
A:「これは緊急避難というより、正当防衛にも該当しえます。ただし、過剰避難、過剰防衛が成立してしまい、減刑や免除の余地はあるとしても、違法行為と評価されてしまう可能性が高いでしょう。」
以上のように、罪に問われない可能性があります。とはいえ、現実でこのような事態が起きるのは極めてまれなことでしょう。コナン君が許されているのは、あくまでアニメ・マンガのキャラクターだからということですね。
*弁護士監修/ 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、
*執筆/シェア法編集部
*画像はイメージです(pixta)