「父が亡くなったので忌引休暇を取得します」など、嘘をついて会社を休もうとする人が、世の中にはいるらしくたまに何度も行っていたなど悪質なケースは報道がされたりします。
そのような、嘘をついて会社を休んだ場合、労働者はどのようなペナルティを受けるのでしょうか。どのような処分となるのが妥当なのか、解説してみたいと思います。
■懲戒について
懲戒とは、職場のルールを破った労働者に対するペナルティのことです。
労働者に対する会社の懲戒は、会社が存続できるようにするため、会社が事業をスムーズに運営できるようにするために認められます。
■懲戒が有効になるための要件とは
懲戒が有効になるためには、会社の就業規則に懲戒の種別と懲戒事由を定められていること、労働者に対する懲戒が労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして合理的かつ相当といえること、が必要です。
まず、会社は、就業規則に書かれていない理由で労働者を懲戒することはできません。
労働者を懲戒するためには、就業規則に書かれてある悪い事(=懲戒事由)を労働者がした場合である必要があります。
次に、労働者の行為がたとえ就業規則の懲戒事由に該当するとしても、不合理な理由での懲戒は認められませんし、懲戒事由と比較して重すぎる懲戒も認められません。
■労働者が嘘をついて会社を休んだ場合
就業規則に懲戒事由として例えば「正当な理由なく欠勤したとき」といった記載があれば、これに該当すると言えそうです。
たとえ会社の了解を得ていたとしても、会社をだまして了解を得ていたわけですから、会社の了解も無効であり、会社の了解を得ていない欠勤であると評価できます。
また、正当な理由のない欠勤が職場の秩序を乱すことは明らかであると考えられますから、懲戒事由として不合理な理由とは言えません。したがって、労働者に対して戒告・減給といった相応の懲戒処分をすることは認められます。
しかし、1回嘘をついて休日を取ったからといって、労働者を降格したり解雇したりすることまでは懲戒事由と比較して重すぎるので認められないと考えます。
もちろん、何度も繰り返したら解雇になる可能性もあるでしょうが……。
*この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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