破産手続きをすると、借金を全てなかったことにできるというイメージをお持ちの方も多いと思います。確かに多くの債務は破産手続きで免責の許可決定を受けて、これが確定すれば支払い義務がなくなります。
しかしながら破産法には、“非免責債権”と呼ばれる、免責許可決定を受けても支払いを免れない債権が定められているため(破産法第253条1項各号)注意が必要です。
以下、代表的なものを見ていきましょう。
■1 租税等の請求権(1号)
税金等の公租公課は、免責許可を受けても支払いを免れないものの代表格です。少額であれば、他の債務の支払いを免れることによって支払いが可能になりますが、税金だけでもかなりの滞納額になると、破産手続き後の生活を圧迫することになりかねません。
破産する予定だからといって、支払いを怠らないようにしましょう。
■2 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
基本的に、不法行為に基づく損害賠償請求権は免責の対象になりますが、不法行為が悪意で加えたものである場合は免責されません。
例えば、一般的には不貞行為による損害賠償請求権は免責の対象になるものと思われますが、不貞行為が相手の配偶者に対する積極的な害意をもって行われたものでであるとなると免責されない場合もあり得ます。
■3 破産者が扶養義務に基づいて負担すべき費用に係る請求権(4号)
代表的なものは養育費や婚姻費用です。破産手続き前に滞納していた分も含めて非免責債権になりますので注意が必要です。
■4 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(6号)
何らかの事情で債権者一覧に記載しなかった場合、その債権者の有する請求権は、免責されません。
手続きにはすべての債権者を参加させる必要がありますので、本来であれば、あってはならないことですが、家族や友人等から借り入れがある場合にあえて載せないケースもあり得ます。
その他にも、罰金等や、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権等も非免責債権となりますので、破産手続きを取るにあたっては、非免責債権がどれだけあるのかを把握した上で破産後の生活の見通しを立てることをお勧めします。
*著者:長山るみ(弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。離婚問題から債務問題まで幅広く精通。思わぬトラブルに巻き込まれると、心身共に疲弊し、どのように対処していいのか途方に暮れることもあると思います。そんな時は是非ご相談ください。)
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